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中日春秋

2021年6月27日 05時00分 (6月27日 05時01分更新)
 星新一さんが一九六〇年に書いたショートショートに「生活維持省」という作品がある。未来の社会はこの役所の働きのおかげで豊かで平穏な暮らしが守られている。いったい、どんな仕事をしているか
▼これがおっかない。計算機が毎日、無差別に人間を選びだし、この省の役人が選ばれた人間を光線銃で殺していく。役人が言う。「この方針をやめたら、どうなります。たちまち昔のように人口が増え…」。殺人によって人口増を抑えるという筋書きである
▼当時は人口爆発への不安があったのだろう。未来をズバリと言い当てた作品の数多い星さんもここは見誤ったか。日本の総人口である。国勢調査の速報値によると、二〇二〇年十月時点の人口は一億二千六百二十二万六千五百六十八人で前回の調査(一五年)から約八十六万人減った
▼前回に続いてこれで二度目の減少。にぎやかだった広場から人々が次々と消えていく。そんな寂しい光景を見ている気分になる
▼減少率は0・7%で、前回ほど悪くはないが、これも外国人の増加のおかげという。あのショートショートから約六十年後の日本は人口増ではなく人口減で悩んでいる
▼コロナ禍で出生数の落ち込みもあり人口減はさらに進む可能性もある。星さんの予言が当たったとすれば「生活維持」のための抜本的な人口問題への取り組みが必要になっている点であろう。

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