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「人間で言うと何歳なの?」この質問もうウンザリ 動物の“寿命”をどう評価するかは難しい

2021年6月25日 06時00分

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競馬は科学だ

競馬は科学だ

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 若手時代に3年弱、地方の通信部記者を経験した。一般紙地方版で動物関係の原稿は重宝されるネタだが、書くとしばしばデスクからウンザリする質問が寄せられた。高齢動物が関わると、二言目には「人間で言うと何歳なの?」
 「ナンセンスの極み」と称するべき物事は、世の中にたくさんあるだろう。これは最たるもののひとつだと思う。“寿命”を人間と比べて、動物の年齢を伸び縮みさせるという考え方自体は、決してとっぴではないものの、動物の“寿命”をどう評価するかは難しい。
 動物の生息する、あるいは飼育される、環境や、人間社会における立ち位置によっても変わるし、1個体の中でも、臓器によって事情が変わる。
 例えば乳牛。種雄牛となるまれな個体を別にすれば、雄の大半は早期に肥育に回される。雌は毎年、子牛を産みながら牛乳を出し続けるが、出なくなれば廃用。やはり「国産牛」としてスーパーに並ぶことになる。では、ごく少数の種雄牛の生きた長さが物差しになるかといえば怪しい。食餌や運動環境を含めた飼育環境が、他と違いすぎる。
 サラブレッドは一部の「功労馬」が老衰するまで生きる。比較的物さしが手に入りやすい生きもので「数え年の4倍」が相場などとも言われる。ところが繁殖が関係するとこの単純な年齢換算は破綻する。キズナは母キャットクイルが20歳で生んだ子だ。先日、種牡馬引退が発表されたハーツクライも今年20歳だ。人で「76歳が出産」となれば世界的ニュースだし、「76歳で父になる」も、まあ珍しい事象だろう。
 動物園や水族館の広報が、マスコミに「人間で言えば○×歳」と答えているのは、それを欲しがるマスコミに対する“大人の対応”にすぎない。裏では専門家として割り切れない思いも抱えていることは、同業者には知っておいてほしい。
 26日の東京ジャンプS出走の9歳馬マイネルプロンプトも、馬齢がファンに馬券購入をためらわせるファクターになるに違いない。けれど、肉体的年齢を「(9―1)×4=32」のように単純に理解するのは断じて正しくない。

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