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劇的優勝のジョン・ラーム「彼にささげたい」 コロナに倒れたジャーナリストとの絆【武川玲子コラム】

2021年6月23日 06時00分

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優勝したジョン・ラーム(AP)

優勝したジョン・ラーム(AP)

◇コラム「米ツアー見聞録」
 全米オープン(米カリフォルニア州)はスペインのジョン・ラーム(26)が上がり2ホールで8メートルと6メートルのバーディーパットを沈め、劇的なメジャー初優勝を飾った。表彰式。2週前にコロナ感染したラームは一人のジャーナリストの名を挙げ、この復帰戦勝利を「彼にささげたい」と話した。そのストーリーに心を奪われた。
 ホセ・マニュエル・コルティザスさん。ラームの出身地、スペイン・バスク地方の地元新聞記者だった彼は今年2月、コロナに感染し、亡くなった。「僕がプロ転向した2016年」とラームは、5年前の2人の出会いから語り始めた。
 「『すごい選手がいるから追いかけろ』と会社がホセに指示を出したのさ。それまでバスケットボールが専門で、ゴルフコースに足を踏み入れたこともなかったが、すぐに飛行機に飛び乗った。その日から僕を追いかけ世界中を回ったんだ」
 ゴルフが分からなかったホセさんだが、ラームを高く評価してくれた。その一方で「悪いことは指摘された。でも良い行いも必ず褒めてくれた」と振り返る。
 ラームは激情型の選手として知られるが、4月に大学同級生のケリー夫人との間に第1子が誕生し、ずいぶんと大人びてきた。ホセさんとは「良き友達で、家族ぐるみで付き合っていた」としみじみ。次はラームが子育てについて教わる番だったかもしれない。
 健康だったホセさんがコロナに感染し、間もなく集中治療室(ICU)に運ばれた。「本当にあっという間だった。まだ20歳の娘さんがいるのに。彼がここにいてくれたら…。どれだけこの勝利を喜んでくれただろう」と声を絞り出した。
 58歳だったホセさん。ごく最近にゴルフを始めたばかりだったという。スポーツジャーナリズムの形が問われている昨今、2人の間には確かな信頼関係があった。ラームが18番グリーン上で浮かべた会心の笑顔は、天国からも温かいまなざしで見守られていたに違いない。(全米ゴルフ記者協会会員)
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