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静岡県知事4選 リニア膠着打開の道は

2021年6月22日 05時00分 (6月22日 05時01分更新)
 静岡県知事選は、川勝平太知事が自民党推薦の新人を大差で破り、四選を果たした。リニア中央新幹線の南アルプストンネル(静岡市葵区)工事に対する知事のかたくななまでの姿勢も、有権者から一定の評価を得たと言えよう。
 大井川の流量や南アの自然への影響を巡り、膠着(こうちゃく)状態が続く工事の行方は知事選後も予断を許さない。国土交通省の有識者会議は四月、JR東海の対策を評価し「流量への影響は極めて小さい」とする中間報告案を出したが、知事は座長を「御用学者」呼ばわりするなど、受け入れない構えだ。
 科学的視点を頭から否定するような冷静さを欠いた議論からベストな解決策は見いだせまい。JR側の工学的な主張を科学的に厳しく検証することで、具体的な負の影響や、その対処法が明確になっていくはずだ。「着工ありき」でも「とにかくノー」でもなく、問題を具体化させ、一つ一つクリアしていくしか、道はあるまい。
 リニアは日本の未来像にもかかわる大事業であり、開業を見据えた開発計画も各地で進む。知事自身も「リニア自体に反対ではない」という立場であり、膠着状態がこれ以上長引くのは好ましくない。四期目に入るのを機に、この難題に解決の糸口を見いだす手腕を発揮してほしい。
 リニアには別の課題もある。新型コロナの影響で新幹線需要が落ち込み、JR東海は昨年度、民営化後初の赤字に陥った。リニアの総工事費は地震や難工事対策などで一兆五千億円増える見込みといい、事業計画の見直しを迫られる可能性も指摘されている。
 東京都調布市の東京外郭環状道路のトンネル工事で昨年起きた陥没が落とす影も依然濃い。リニアも首都圏や愛知県内で、同じ大深度のトンネル掘削をするからだ。JR東海は今月上旬、都内で説明会を開いたが、調布の陥没は「特殊な地盤」や施工ミスが原因と強調。追加の調査を求める住民側の声に応えようとはしなかった。
 ただでさえ、実際に掘るまで完全には地上への影響を見通せないのがトンネル工事だ。ましてあんな陥没が起きたのだから、住民に不安が募るのは当然だろう。静岡工区にも通じるが、ひたすら「着工ありき」の姿勢では地元の不安も不信も払拭(ふっしょく)できまい。JR東海は信頼関係の構築という原点に立ち戻り、対応を考えてほしい。

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