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馬にとって「蹄は第2の心臓」左前蹄部の外傷で『長期休養』ロータスランドにとって回り道ではなかった

2021年6月18日 06時00分

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競馬は科学だ

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◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 準オープンからの格上挑戦で米子Sにエントリーしたロータスランドは、2歳時にはもみじSでラウダシオンに1馬身半差2着の実績がある。古馬になってから初のオープン挑戦といえど、地力は十分足りている1頭だ。3歳シーズンを順調に過ごせなかったのは昨年6月の阪神で左前挫跖(ざせき)のため枠順発表前取消したのが響いた形。左前蹄部の外傷だ。そこから3走前まで8カ月の休みを挟んでいる。
 サラブレッドは約500キロの体重を、4つの蹄で支える。立てなくなると外表面では床擦れ、内臓にもさまざまな不具合が多発する。立てる状態であることは、生命維持に不可欠だ。そうした自らの身体的制約を本能的に知っているのか、馬は蹄の痛みに非常に敏感だ。形式上、外表面で起こったけがが、軽めの骨折より長い休養期間をロータスランドに強いたのには、こうした背景がある。「蹄は馬の第2の心臓」と言われるのは、ひとつにはこうした意味がある。
 一方でこの成句は、文字どおりの意味もはらむ。蹄は体幹側へ、血液を送り返す役割も担う。人でも「脚は第2の心臓」という言い方をするが、歩行時にふくらはぎや足裏の筋肉が、伸び縮みする際に静脈を圧迫し、静脈血を上方に押し返している。「健康のために歩け」とは、この作用による循環促進に期待する意味も込められている。
 ところが馬のアシ(脚および足)は、筋肉が非常に乏しい組織だ。豊かなバネ性能を備えた腱(けん)には富むが、腱の伸び縮みでは静脈を圧迫して血液循環を助けることができない。
 代わりに働くのが蹄だ。蹄は走行時、地面にたたきつけられると広がる。Uの字の両端が、外側に開いていくイメージだ。蹄が地面をけって宙に浮くと、本来の形に戻る。この時、蹄内部に分布する静脈は一度広げられ、次に圧迫される。この動きには「蹄機作用」と、名付けられており、これによって静脈血を蹄から体幹に送り返している。
 ロータスランドの直近3走好走は、挫跖の後、焦らずじっくり待ったことの果実だ。本来の素質が4歳夏にして花開くのを期待したい。

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