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「#教師のバトン」過酷さ訴える声殺到 文科省へ直談判の動きも

2021年6月17日 05時00分 (6月17日 05時00分更新)
教師の働き方改革を求める訴えを書き込んだ本物のバトン=名古屋市内で

教師の働き方改革を求める訴えを書き込んだ本物のバトン=名古屋市内で

  • 教師の働き方改革を求める訴えを書き込んだ本物のバトン=名古屋市内で
 教師の仕事の魅力をツイッターに投稿してもらい、なり手を増やそうと始まったプロジェクト「#教師のバトン」。企画した文部科学省の期待とは裏腹に、現場の教員から過酷な労働環境への悲痛な叫びが殺到している。つぶやきは直接的な行動に発展。東海地方の教員四人は二十一日、自分たちの訴えを書き込んだ本物のリレー用バトンを文科省の担当者に手渡す予定だ。 (石川由佳理)
 「もし今タイムリープ(時間跳躍)ができるなら絶対に大学生に戻ります。一般企業に就職しなさいと何時間でも何日でも(当時の自分を)説得します」「三年勤めて精神疾患になりました。土日休めない。毎日残業。毎月九十時間近くの時間外労働。死にたいってずっと思ってた」。今も教員や家族の投稿が続く。
 プロジェクトの狙いは「多様な学校で行う創意工夫」や「派手ではないが、ちょっと役立つイイ話」を全国の教師や学生にバトンのようにつなげることだった。だが三月末に始めると、部活動の負担や長時間労働の過酷さを伝えるつぶやきがあふれ、半ば「炎上」のような状態になった。
 萩生田光一文科相は三月下旬の会見で「先生方の思いをしっかり受け止めて働き方改革を進めたい」とした一方、「願わくは学校の先生ですから、もう少し品のいい書き方を」と話し、火に油を注ぐ格好に。ツイッター上ではアカウント名に(上品)と追加するユーザーも登場した。
 愛知県一宮市の小学校教諭加藤豊裕(あつひろ)さん(42)も投稿者の一人だが、「つぶやきだけでなく、直接的な行動が必要」と、本物のバトンと共に訴えの文面を文科省に届けるプロジェクトを愛知、三重、静岡県の教員三人と企画。「教師からのバトン」と名付けた。ツイッターの投稿は百四十字の文字制限があるため、制限のないメッセージ機能を使った訴えを募集。十五日現在、二十五都道府県の教員から五十三件が集まっている=一部を上のイラストで紹介。
 企画者の一人で、三重県の特別支援学校の三十代男性は六年ほど前、月の残業時間が百五十時間にも達し、うつ病と診断された。進路指導部に所属していたが、教師を志望する生徒に考え直すよう説得した。「同じ仕事を目指してくれるのはうれしいが、不幸になってほしくない」
 バトンの費用と交通費の一部はクラウドファンディングで募った。加藤さんは「言っても無理だからと諦めるのではなく、共に闘おう。相談にも個別で応じたい」と話す。メッセージは、加藤さんのツイッターアカウント=市民労働基準監督官(@LSinspector)=へ。

理想とのギャップに悩む

 過重労働で休みを繰り返し、理想との隔たりに悩む教員も。
 愛知県の小学校の三十代男性は六年の担任だった昨年九月、急に布団から起き上がれなくなり、休んだ。六年は二学級あり、もう片方の担任が精神面などの理由で先に仕事を休みがちに。男性は自分の学級を指導しながら、もう片方の学級を見る日も。家に帰っても頭から仕事のことが離れなくなっていた。
 精神状態が落ち着いて復帰しても再び休むことを繰り返し、「こんな思いをしてまで続ける仕事じゃない」と退職を決めた。校長に伝えると、担任を持たない選択肢もあると提案された。現在は高学年の一部の教科を担当する。精神的に楽にはなったが、理想の教員像とのギャップに苦しみ続けている。
 「次の社会を担う子どもを育てる教師は、日本で一番重要な職業であってほしい。今の状況では子どもに教師になってほしいとは思わない」と声を絞り出した。

 小学校教員のなり手不足 2020年度採用の公立小の教員試験の倍率は過去最低の2・7倍。1・4倍の佐賀、長崎県をはじめ13自治体で2倍を切った。文科省は、子どもが多い時期に教師になった人の大量退職に伴い、採用者数を増やしたことが主な要因だと分析するが、労働環境の過酷さによる人気低迷も一因だと指摘されている。さらに本年度からは公立小の35人学級化が始まり、25年度の完了までに計1万3500人の教員が必要とされている。


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