本文へ移動

コロナと鵜飼 伝統の灯を守るために

2021年6月12日 05時00分 (6月12日 05時00分更新)
 千三百年の歴史を持つ岐阜市の長良川鵜飼が苦境にある。新型コロナウイルス禍に豪雨も重なった昨年の観覧船乗客数は史上最低の一万五千三百十人。今年も開幕延期を余儀なくされた。観光の目玉でもある伝統文化の灯を消さないため、官民挙げて知恵を出し合い支えていく必要があろう。
 開幕の延期は二年連続。今年は五月十一日に開幕する予定だったが、岐阜県への「まん延防止等重点措置」適用などで、二度にわたり延期を強いられた。今のところ開幕は六月二十一日の予定だ。
 同市鵜飼観覧船事務所は昨年、コロナ対策で観覧船での飲食を禁止したが、今年はコロナ禍での巻き返しを図ろうと船内に飛沫(ひまつ)防止用のパネルを設置し、飲食解禁の方針で準備していた。それだけに出ばなをくじかれた形だ。
 だが、心強いのは、コロナ後を見すえ、官民で鵜飼の魅力アップを図る動きがあることだ。岐阜商工会議所は昨年、観光客らが岐阜ちょうちんを手に岸辺の遊歩道から鵜飼を眺める「かわべの宵(ゆうべ)」を開催。同市も川岸に観覧船を係留し、船の上から鵜飼を楽しめる「水上座敷」の試みを手がけた。
 こうした初の取り組みを継続拡充し、新しい楽しみ方を提言していくことも、鵜飼の持続的発展につながると期待したい。
 松尾芭蕉も岐阜を訪れて見物し「おもしろうて やがて悲しき 鵜舟かな」の句を残した、中部を代表する文化観光資源の一つ。地元で息長く愛されることが伝統の灯を守ることにもつながる。
 岐阜市は二〇〇一年から主に小学五年生が鵜飼体験する事業を続けてきた。昨年はコロナ禍で中止されたが、自分の目で鵜飼を見た子どもたちが、やがて、その魅力を発信してくれることもあろう。
 乗船客のピークは繊維業が隆盛だった一九七三年の三十四万人弱。実は、観覧船が多すぎてじっくり鑑賞できなかったという。二〇一〇年から数年間は年十一万人弱で推移してきた。「これが鵜飼をじっくり見られる適正な規模」(同事務所)であることもPRしていきたい。市は当面、コロナ前水準の約七割にあたる七万五千人を今年の乗船目標にしている。
 東海地方では、岐阜県関市の小瀬鵜飼、愛知県犬山市の木曽川鵜飼が開幕したが、乗船客は少ない。コロナを克服し、川面に歓声の戻る日が一日も早くと願う。

関連キーワード

PR情報