本文へ移動

<大波小波> シェフたちの哲学

2021年6月11日 16時00分 (6月11日 16時00分更新)
 二十年ほど前、料理本で有名な柴田書店から『イタリアに行ってコックになる』という本が出た。著者は無名のコピーライター。たまたま旅行先のイタリアで日本人コックに出逢(あ)ったことが切っ掛けで、二十四人をインタビュー。キャンパスノートのように地味な装丁にまとめた。いつになったら店が持てるだろう。野菜も水も違う日本に帰って、本物のイタリア料理が作れるだろうか。日本人なのになぜイタリア料理なのか。野心と情熱の間に不安が覗(のぞ)く青春群像だった。
 『シェフたちのコロナ禍』(文芸春秋)は、その後料理雑誌で健筆をふるうことになった井川直子の、最新インタビュー集である。昨年四月の緊急事態宣言に困惑したレストラン業界に生きる、三十四人のシェフの声を集めたものだ。
 店とスタッフを維持していくにはどうすればよいのか。どのシェフも他のシェフの考えを知りたがっている。そして料理雑誌は外食業界もりたてのため、こうした話題を避けたがる。だが本当にシェフたちが悩んでいるのは採算の問題だけではない。料理とは何か。料理を作って人に出すとはいかなる行為なのかという本源的問いだと、井川は言う。インタビューが人間哲学に近づく...

中日新聞読者の方は、無料の会員登録で、この記事の続きが読めます。

※中日新聞読者には、中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井の定期読者が含まれます。

関連キーワード

おすすめ情報

文化の新着

記事一覧