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韓国勢台頭の米女子ツアーに風穴を開ける日本勢…先駆者・宮里藍が笹生&畑岡の歴史的頂上決戦への扉開いた

2021年6月7日 14時32分

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全米女子オープンを制した笹生優香。後方は畑岡奈紗(AP)

全米女子オープンを制した笹生優香。後方は畑岡奈紗(AP)

◇ヘンリー鈴木のスポーツ方丈記
 女子ゴルフ最高峰の大会である全米女子オープンは、19歳の笹生優花が畑岡奈紗とのプレーオフを制して大会史上最年少で優勝を飾った。前半を終えて独走態勢だった米国のレキシー・トンプソンが後半に入ってショット、パットとも乱れたのとは対照的に、2人は最後まであきらめずに食らいつき、日本勢同士による頂上決戦という歴史に残る快挙を成し遂げた。
 ここ数年の米女子ツアーは、韓国勢の台頭が著しかった。賞金女王は日本ツアーで現在活躍する2009年の申ジエを皮切りに、昨年までの12年間で延べ8人が韓国、あるいは韓国に由来のある選手だ。今大会も昨年までは韓国勢が2年連続で優勝。大会前の世界ランキングでも1~3位を韓国勢が独占し、それを米国やタイなどの選手が追う展開だった。
 そのような状況に風穴を開けつつあるのが日本だ。2年前の渋野日向子の全英オープン優勝が記憶に新しい世界のゴルフ界は、日本の選手層が年々厚くなっていることに驚いているのではなかろうか。男子ゴルフのマスターズ会場が女子にも門戸を開いたとして注目される4月の第2回オーガスタ・ナショナル女子アマチュア選手権でも梶谷翼(滝川二高3年)が優勝しているのだから、なおさらだろう。
 スポーツにおいて新たな力が台頭する背景には「先駆者」「環境」「ライバル」の3条件が必要だ。今や日本の女子ゴルフを引っ張る存在となっている畑岡、渋野ら1998年度生まれの“黄金世代”は、ほとんどの選手が宮里藍にあこがれて小学校の時からゴルフを始めた。彼女たちにとって宮里は、ゴルフを通じて世界への扉が開く可能性があることを教えてくれた先駆者だ。
 宮里の活躍をきっかけに女子ツアーの賞金総額も年々上昇。今ではトップクラスなら年間1億円以上を獲得することも珍しくなく、親たちも子どものゴルフを積極的に応援するようになった。さらに有望な選手は日本代表のチーム・ジャパンに選ばれ、豪州から6年前にヘッドコーチとして招いたガレス・ジョーンズ氏の指導で世界に勝つための科学的理論や戦略、フィジカル・トレーニングなどを徹底的に教え込まれ、海外遠征も繰り返す。
 このような環境で鍛え抜かれた選手たちはプロに巣立ってからもお互いをライバルとして磨き合い、チーム・ジャパンに入っていなかった選手たちにも刺激を与えて成長を続けている。母親の母国フィリピンと日本を行き来して試合に出場していた笹生も、ライバルがひしめき合う中で自らを磨いてきた一人だ。
 4月にチーム・ジャパン出身の吉田優利ら「ミレニアム世代」と呼ばれる2000年度生まれの女子プロたちの対談を司会する機会があり、私はその席で女子ゴルフ界の数年後がどうなっているかを選手たちに予想してもらった。
 「道具もスイングも絶え間なく進化し、新しい選手が次々と台頭してくると思います。私たちも置いていかれないようにするしかない」
 彼女たちが口をそろえたのを聞いた私は「そのような危機感があれば、米女子ツアーの上位を日本勢が占める時がいつか訪れるかもしれないね」と言った。それから2カ月もたたず、このような日が来るとは思わなかった。深くて密集したラフと神経を使うグリーンでスコアを崩す選手が相次いだ難コースで、メジャーの頂点を争った笹生と畑岡。2人の体力、技術、そして精神力に最大級の賛辞を送りたい。
 ◆ヘンリー鈴木(鈴木遍理) 東京中日スポーツ報道部長、東京新聞運動部長、同論説委員などを経て現東京中日スポーツ編集委員。これまで中日ドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズ、大リーグ、名古屋グランパス、ゴルフ、五輪などを担当。
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