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昨年の有馬記念で競走中止したブラストワンピースが復帰「心房細動」の予後は多くの場合良好も心配は精神的ダメージ

2021年6月4日 06時00分

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嶋田を背に、美浦ウッドチップコースで併せて追われるブラストワンピース(右)

嶋田を背に、美浦ウッドチップコースで併せて追われるブラストワンピース(右)

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 昨年の有馬記念を競走中止したブラストワンピースが、鳴尾記念で戦線復帰する。地力だけの比較であれば頭ひとつ以上、抜きんでている。取捨の争点は、有馬記念で競走中止の原因となった「心房細動」のその後だろう。
 生物の中のことなので、意外に思われるかもしれないが、心臓の動きは電気で制御されている。全身から帰ってきた静脈血は最初に右心房に入る。右心房に接続している静脈と右心房の境目あたりにある洞房結節という領域に特殊な細胞(ペースメーカー)があり、定期的な電気信号を出している。心臓内にはこの電気信号を伝える「刺激伝導系」と呼ばれる“電線”のような構造があり、心臓各部に電気信号を届けることで、全体の動きを規則正しくコントロールする。
 この“電線”を通る電気の流れが混乱すると、心臓の動きも乱れる。洞房結節から発せられた電気信号は本来、一方通行なのだが、行った先で別の“電線”を刺激。電気が意図せぬ回路をグルグル回ってしまうエラー(リエントリー)が起こることがある。
 心房内でリエントリーが起こり、心房の収縮が小刻みに不規則となるのが心房細動だ。心房での現象だが、心臓による血液の拍出が全体として滞る。馬での最も古い報告は1911年の英国だが、競走中の競走馬での発症が心電図によって発見されたのは1974年。JRAが世界に先駆けた発見だった。88~97年のJRA出走のべ404090頭を対象とした疫学調査では123頭で発生。発生率は0・03%だった。うち114例(92・7%)が24時間以内に治療することなく、正常な心臓の動きに戻っている。
 競走中の心房細動では馬は身体的に非常にきつい思いをするため、精神的ダメージや学習によって、全力疾走を忌避するようになる可能性を若干考えておかねばならない。しかし、ことフィジカルな能力に関しては、後に問題を残すようなことはまれだ。ブラストワンピースの競走能力そのものは、損なわれていないと考えるのが妥当だろう。逆に、今回あまりに走らないとなれば、原因は精神的ダメージだろう。復権への道は険しくなる。

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