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名著『須恵村』初の全訳を刊行

2021年5月28日 05時00分 (5月28日 10時07分更新)
新たに全訳されたエンブリーの名著「須恵村」

新たに全訳されたエンブリーの名著「須恵村」

 米国の社会人類学者ジョン・F・エンブリー(一九〇八〜五〇年)の研究書『須恵村−日本の村』の邦訳が今月出た。原著は三九年の刊行で、戦前には外国人による唯一の人類学的な日本農村の研究書との評価を受け、ベストセラーにもなった名著だ。しかしこれまでは抄訳しかなく、初の全訳の登場となる。
 エンブリーは日本育ちの妻エラとともに、熊本県の須恵村(現あさぎり町)に三五年から一年滞在した。近代化の波にのみ込まれる前の山村の風俗や、人々の暮らしを克明に調査した。
 村の独特の「はじあい」と呼ばれる共同の労働で、村人たちが助け合う姿などを詳しく見て回り、的確な文章で活写。今では消えたものの、かつてはこの国に確かにあった生活の実相を貴重な写真の数々とともに詳細に記録している。
 訳者はジャーナリストの田中一彦さん。エンブリーが描いた須恵村の暮らしと村民の姿を、日本文明の基底を形作るものと指摘し、本書の意義を「近代化や都市化、工業化、無定見なAI(人工知能)化一辺倒に対する異見でもあり、裏返せば、衰退する農の再生、自然の営みとともにある暮らしへの願い」とつづる。
 農文協刊。四千九百五十円。(三品信)

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