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デジタル関連法 個人情報保護の後退だ

2021年5月26日 05時00分 (5月26日 05時00分更新)
 菅義偉首相肝いりのデジタル関連法が成立した。政府や企業が個人情報を活用しやすくなる一方、プライバシー保護は後退する恐れが強まった。国民の信頼を得るためには、さらなる改正が必要だ。
 関連法は、デジタル庁設置法など五本の新法と改正個人情報保護法など計六十三本で構成される。
 デジタル化は時代の流れといわれるが、国民の幸福に結び付かねば、意味はない。権威主義的な国家が国民監視のため、デジタル技術を活用する例は少なくない。
 自分の病歴や財産、徴税などの情報がどう入手され、誰が見ているのか。それを把握できる透明性とデータ保護があって、はじめて国民は安心できる。民主主義国家の前提ともいえよう。だが、関連法はその原則から逸脱している。
 例えば、個人情報保護法の改正で自治体独自の個人情報保護条例が原則、全国共通のルールに変わる。かねて市民参加による条例づくりなどで、自治体の情報管理は国よりも厳しく、先進的だった。これが後退する可能性が高い。
 国の機関に個人情報が集まりやすくなるが、プライバシー保護への新たな歯止めはない。野党側は集められた自己情報を知り、その使用に関与する権利(自己情報コントロール権)の明記を求めたが、平井卓也デジタル改革担当相は「適切でない」と一蹴した。
 むしろ、個人情報を国が民間などに提供する「目的外使用」の拡大が懸念される。国会審議では、匿名加工された米軍横田基地訴訟の原告名簿が民間への提供対象になっていたことも判明している。
 政府は国の個人情報保護委員会による監視を強化するというが、同委員会は勧告のみで立ち入り調査権などはない。情報量は増えるが職員増員への言及もなかった。
 一方、新設されるデジタル庁は五百人規模だが、約百二十人は民間登用だ。事務次官にあたるデジタル監も民間人だが、官民癒着の温床になる懸念はぬぐえない。
 法律成立までの手法にも疑問がある。政府は慎重な審議が難しい「束ね法案」で提出した。衆参で計五十時間というスピード審議。デジタル庁創設を自民党総裁選で公約した菅首相の都合が優先された感がある。この手法自体が国民の安心感とはほど遠い。
 信頼されるデジタル化を図るためには、個人情報保護委員会の権限強化は不可欠だ。世界の流れでもある自己情報のコントロール権確立とともに法改正を求めたい。

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