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マスクほぼ皆無…米スポーツ界とあまりに対照的な日本 副反応も多いワクチン接種も問題山積み

2021年5月25日 12時39分

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18番で大勢のファンに囲まれるミケルソン(AP)

18番で大勢のファンに囲まれるミケルソン(AP)

◇ヘンリー鈴木のスポーツ方丈記
 目の前に映し出されていたのは、アフター・コロナとも言える別世界でした。50歳のフィル・ミケルソンがメジャー大会史上最年長で優勝を遂げたゴルフの全米プロ選手権。2位に2打差をつけて最終18番のグリーンに向かうミケルソンは興奮したギャラリーに身動きができないほどに取り囲まれ、ウイニングパットを沈めると大歓声とともに「フィル、フィル」の大合唱です。
 マスク姿は、ほぼ皆無。23日(日本時間24日早朝)の米サウスカロライナ州での光景です。
 米国の新型コロナウイルス対策の中心であるCDC(米国疾病管理予防センター)は、今月13日に「ワクチン接種が済んだ人は公共交通機関などを除いてマスクは不用」との指針を発表。今大会は入場者を1万人に制限し、ワクチン接種の有無は確認しないがマスク着用は屋外に限り義務付けていませんでした。
 そうはいっても米国では大会初日の20日も新たな感染者が2万9701人、死者は654人(ニューヨーク・タイムズ調べ)。釈然としなかった私は、その後に出席した日本野球機構(NPB)とJリーグの合同による「新型コロナウイルス対策連絡会議」のリモート会見で、専門家チームの先生方に「日本でもワクチン接種が進めば、このような光景が数カ月後にも実現するのか」と尋ねました。答えは「かなり長い時間がかかるのではないか」でした。
 「CDCがマスク解除を打ち出したのは、接種率が40%ほどで頭打ちになっている米国ならではの戦略があると思う。国民の70~80%が接種、あるいは1日の感染者が一桁という段階になれば日本でもマスク解除はあり得るが…」(東北医科薬科大・賀来満夫教授)
 ワクチン接種が先行する米国などでは接種を拒む、特に若い人に対して、いかにインセンティブ(成果に対する報酬)を与えて打ってもらうかにシフトチェンジしたという報告もあるそうです。マスク解除は、そのための飴(アメ)。そして日本にもいずれ頭打ちとなる段階が訪れるというのが、専門家の方々の見解でした。
 そのような頭打ちを避けるため、この日の対策会議ではプロ野球やJリーグの選手たちが積極的にワクチンを打ち、接種を啓発する社会的貢献についても話し合われたといいます。ただ、自分の体調と向き合って日々最高のプレーをしようと努めている選手たちには、発熱や痛みの副反応も多く報告される接種は悩むところ。特に東京五輪の代表となるプロ野球やJリーグ各チームの主力選手は、シーズンを戦っている最中の6月下旬までに1回目の接種を求められるかもしれません。マスク解除などの飴的措置とは異なる深刻な問題です。Jリーグの村井満チェアマンは、こう話します。
 「啓発の裏側には、接種を受けない権利、すなわち人権問題も存在している。接種を受けない選手が出場資格などで不利益を受けることがないよう、強制されないことが大切。パフォーマンスへの影響も理解し、選手と向き合う必要がある」
 そうは言ってもワクチン接種を拒む選手に対してはさまざまな意見が出るだろうし、ネット上では「わがまま」「ワクチンを打つのが嫌なら出場辞退すればいい」などの声が今から飛び交っています。逆に五輪出場選手が優先して接種を受けることへの批判もあり、アスリートたちはこれら社会的圧力とも向き合わなければならない立場に置かれています。
 このような不幸な状況に陥っていても、五輪の主体となっている政府や東京都などは「安心、安全な大会を開くために」を繰り返すだけで、本来は中心であるべき選手たちに寄り添う姿勢は見せません。五輪の開催がどうなるにせよ、今はアスリートをこれ以上孤立させないことを、各競技団体やメディアは真剣に考える時でしょう。
  ◆ヘンリー鈴木(鈴木遍理) 東京中日スポーツ報道部長、東京新聞運動部長、同論説委員などを経て現東京中日スポーツ編集委員。これまで中日ドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズ、大リーグ、名古屋グランパス、ゴルフ、五輪などを担当。
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