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手を付かず、顔から落ちろが相撲の鉄則だ 不覚の照ノ富士、最後に笑うのは一体…? 【北の富士コラム】

2021年5月23日 05時00分

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遠藤(右)が下手投げで照ノ富士を破る

遠藤(右)が下手投げで照ノ富士を破る

 14日目は、NHKの仕事が休みなので十両の相撲を見ている。土俵入りから見ているが、ほとんどが元幕内力士である。けがで落ちてきた者もいれば、力が衰えていたり、40歳近いベテランも少なくない。どうしても新鮮味に欠けて見える。
 昔は十両の取り組みが始まると、お客さんは一斉に食堂に行く。ランチタイムと言っていたようだ。今は落ちてきた力士の中にも、若手も混じっているので、面白い取り組みも見ることができる。まんざら捨てたものではない。だから物言いもよくついている。
 この日も十両最後の一番に物言いがついた。相撲は好調の千代ノ皇が一山本を一気に攻めて寄り切った。しかし物言いがついて取り直しになった。私はどうして物言いがついたのか分からなかったが、ビデオで見ると一山本が苦し紛れに土俵際で投げを打っている。これで千代ノ皇の足が土俵外に踏み出してはいるが、一山本の左足のかかとがはっきりと蛇の目を踏んでいる。
 確かに微妙ではあるが、私は千代ノ皇が勝っていると見ている。四分六の勝負とよく使うことがある。相撲界にも際どい勝負の時には攻めている方に六分の利があると決まっていたものだ。この一番はその典型的なような一番であった。一方的に攻めていた千代ノ皇が一歩譲ったとしても取り直しはなかろう。
 気を落とした取り直しは、全くやる気が無かった。ふてくされて力を出さないのは大いに責められるが気持ちは分かる。ぶり返すようだが、その点、照ノ富士は腐らず翌日は立派に立ち直ってみせた。やはり大関と十両の精神力の違いである。改めて照ノ富士を見直した次第であります。
 宇良も炎鵬も元気な相撲でうれしい。反対に50年に一人と言われた琴勝峰は全く精彩を欠いている。心配である。
 それでは幕内の相撲を見ることにしましょう。テレビから荒磯親方(元横綱稀勢の里)の元気のいい声が聞こえます。現役時代とはまるで別人のように冗舌です。私も皆さんもすっかりだまされていたようです。こうなったら部屋付きの親方を辞めて解説に専念するのも悪くない。往年の神風さんのような名解説者になれる人です。実にもったいない。何ですか悪い冗談はやめろ? ではそうします。
 たった今、明生と玉鷲の一番。明生が一気に出て土俵際にもつれましたが、物言いがついたが明生が勝ちました。まさに六分四分で前に出た者が勝ちを実証した一番でした。この日の私はしつこいようです。
 たった今、とんでもないことになりました。照ノ富士と遠藤の一番が物言いの末、遠藤の勝ちとなりました。遠藤が立ち合いから巧みにもろ差しとなって照ノ富士に両まわしを許さない体勢となりました。遠藤は十分の体勢となり一気に前に出ました。
 照ノ富士はまわしが取れずに苦し紛れの左から小手投げを連発する。ここまで猛威を発揮している小手投げ。遠藤の体が大きく傾いたが、とっさに下手投げを打ち返した。照ノ富士の体が落ちていく。しかし遠藤の体も完全に裏返っている。ほとんど同時に土俵に落ちたように見えたが、照ノ富士の右手がわずかに早く付いている。
 当然、物言いがつく。長い協議が続いたが、遠藤の勝ちとなった。私はこの判定に異議はない。遠藤の体は確かに裏返って死に体と見るのが妥当だろう。そして返りながらも投げを見せている。手を付かず、顔から落ちろがこの世界の鉄則である。あの手さえ付かなければ照ノ富士の勝ちであった。完全に照ノ富士の不覚であった。
 これで優勝争いは予想もしなかった展開となってきた。照ノ富士には申し訳ないが、お客さんが喜んでくれることが大事でもある。とは言うものの、照ノ富士が少し気の毒になってきた。一体、最後に笑うのは誰だ。この際、予想はやめにしておこう。それが武士の情けというものだ。
 今夜は北海道からアスパラを送ってきたので、バターで炒め、塩、コショーで頂こう。それに冷たいざるそばでも食べよう。(元横綱)
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