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県知事選 リーダー像を訊く 国際政治学者 三浦瑠麗さん

2021年5月22日 05時00分 (5月22日 05時03分更新)
「知事には、コロナの感染対策をしながら経済を回す責任もある」と話す三浦瑠麗さん=東京・永田町で

「知事には、コロナの感染対策をしながら経済を回す責任もある」と話す三浦瑠麗さん=東京・永田町で

 新型コロナウイルスの感染拡大で、国や地方自治のトップのリーダーシップが問われている。先が見通せない今、リーダーに求められる資質は何か。六月三日に告示される静岡県知事選を前に、異なる分野の三人に訊(き)いた。 (知事選取材班)
 コロナ禍にあたって政府は特措法を改正し、戦時下のような「準有事」として扱っています。しかし、政治や行政、医療が適切な対応をできず、人々の怒りがたまっています。国際情勢を見ても、戦後の安定した状況はもう続かない。トップに立つリーダーは、そんな不確実性の時代に対応する能力が必要です。

◆不確実性の時代 導くため

 戦争や疫病の負担は、平等に生じません。コロナ禍では非正規雇用者や女性、子どもといった弱い立場の人が犠牲になりました。非常時に「戦況」が悪くなると「ぜいたくは敵だ」といった風潮のもと、スケープゴートが探され、精神論に陥りがちです。
 従来のように、トップが下から積み上げられたことを了承するような形では、変化には対応できない。今のように物事がうまくいかなくなったときは、人々の心につながる発信ができるか、「説得の技法」が大事になってきます。菅義偉首相が心掛けているのは、言質を取られないよう「ノーミス」であることで、それだけではリーダーとして不十分です。
 SNS(会員制交流サイト)時代でもあり、今はトップの発信や成果がすぐに求められます。ただ、その波にのまれ過ぎず、黙って施策に取り組み、汗をかくことを怠ってはならない。知事は直接選挙で選ばれるので総理大臣よりポピュリズム(大衆迎合主義)に弱く、ふわっとした民意に乗りやすい傾向もある。慌てず、あえて「遅れ」ながら、熟慮してほしい。
 ただ、コロナ禍では、市民の側も「ものごとをはっきり言うリーダー」を求めてしまう。安倍晋三前首相が昨年春、休校を突然打ち出したのも、その圧力に押されたからです。当時は合理性も構わず断定的に、とにかく「戦時下」の気分にさせるリーダーが、世界中で称賛されていました。
 知事の役割は、避けられる死者を出さず、地域経済や文化、人々の生活を支えること。各地のトップは自粛を訴えることばかりにフォーカスして、人間に関心が向いていません。すぐには終わらないコロナ禍だからこそ、機嫌良く生活することも重要です。国立博物館まで休館になりましたが、人が他に行くだけ。出口がない方向に人々を追いやっても益はありません。
 医療体制の確保やワクチン接種の混乱を見ると、国と自治体が互いにうまく動けず「お見合い状態」になっています。特措法の改正などで、都道府県知事には権限が移譲されてきた。ならば医療体制やワクチンに関してこそリーダーシップを振るってほしい。日本が諸外国に比べて感染者が少ない割に、経済ダメージが大きいのは、ここが欠けているためです。
 リーダーを選ぶ際、私ならまず人柄を見ます。極端なもの言いをせず、人望が厚い人。リーダーシップにおいて、人望は知性よりも大事なところがあるからです。もう一つは、未来のために投資しようとしているか。今いる人だけを満足させるだけではだめです。みんなが頑張る環境づくりができる人がいいですね。

 <みうら・るり> 1980年、神奈川県生まれ。東京大大学院法学政治学研究科修了。山猫総合研究所代表取締役。著作に「シビリアンの戦争 デモクラシーが攻撃的になるとき」「日本の分断−私たちの民主主義の未来について」など。40歳。


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