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寂しい「ともし火リレー」高橋大輔さんから締めは森末慎二さん…豪華メンバーでも無観客

2021年5月20日 17時21分

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混乱を避けるため辞退した有森裕子さん

混乱を避けるため辞退した有森裕子さん

【コラム・光と影と】
 「ともし火リレー」は20日、2日間にわたる岡山での「手渡しの儀式」を終えた。沿道に地元の人たちが繰り出し、初日の19日は、大声援が沸き上がることのない無観客の岡山城内だった。第1「走者」を務めたのは、2012年ロンドン五輪女子マラソン代表の重友梨佐さん。走者と行っても、ほんの少し歩いて炎を相手に移すだけの「トーチキス」である。すべては、憎いコロナのせいである。
 それにしても、この日のメンバーは豪華だった。途中、フィギュアスケートの10年バンクーバー五輪代表・高橋大輔さんから、1980年モスクワ五輪400メートル障害で幻の代表・長尾隆史さんに炎が渡り、締めは84年ロス五輪体操の金メダリスト森末慎二さんが務めた。繰り返すが、これが無観客で行われた。
 華やかな、おらが国のスター選手たちを織り交ぜ、いやがうえにも東京オリンピックのムードを盛り上げようと企画された「聖火リレー」だが、3月25日の福島から始まったリレーは、やがて「トーチキス」なる言葉を流行させ、今日に至っている。「コロナに負けない」意志は、時折、走らない「ともし火リレー」となって、これからも全国のどこかで、ささやかなセレモニーが続く。
 岡山では、先の4人に加えて、初日にもう1人、スーパースターが走るはずだった。92年バルセロナ銀、96年アトランタ銅の五輪女子マラソンメダリスト、有森裕子さんは、参加が決まっていたが「直前まで迷って…走りたかったが…」辞退した。「私が行くことで、地元を混乱させたら迷惑をかける」というのが、悲しい理由だった。彼女は、混乱を避けるため、故郷の地を踏むことが無かった。
 国際オリンピック委員会のトップと、日本政府のトップは「東京オリンピックは開催される」と、言を変えることがない。パンデミック(世界的大流行)の最中に「コロナに打ち勝った証し」と言い続けている。世界先進国の中では、しんがりから、ぼちぼち始まったワクチン接種は五輪開催に間に合い、特効薬になるのか。既に、海外からのお客さまには「ご遠慮いただく」方針が示されている。それをオリンピック=世界のお祭りと言えるのか、はなはだ疑問である。
 「ともし火」リレーは、21日、岡山から鳥取に移る。ここでも、五輪のマラソンメダリストが走ることはない。92年バルセロナ五輪で銀メダルに輝いた森下広一さんは、混雑を恐れた県のトップからの「お願い」もあって辞退を決めたと言われている。
 92年バルセロナの夏―。中日新聞社の特派員として現地に赴き、2人の快挙、笑顔を見届けた私は、悲しい。つらい。(満薗文博・スポーツジャーナリスト)

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