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【石川】金沢の料亭 希望の明かり 自粛要請でも「気持ちは前向き」

2021年5月16日 05時00分 (5月16日 10時53分更新)
ライトアップされたつば甚を背に「明るくにぎやかな金沢に戻れるように」と願いを込める若おかみの鍔裕加里さん=15日午後7時18分、金沢市清川町で(中嶋大撮影)

ライトアップされたつば甚を背に「明るくにぎやかな金沢に戻れるように」と願いを込める若おかみの鍔裕加里さん=15日午後7時18分、金沢市清川町で(中嶋大撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大で気持ちが沈んでいる金沢市民の希望の光になれば。金沢最古の料亭「つば甚」(金沢市寺町)は犀川に面した大広間と大通り沿いの玄関の明かりを毎晩ともす取り組みを始めた。政府の「まん延防止等重点措置」の適用に伴い、市内の飲食店には十六日から酒類提供の終日自粛が要請される。若おかみの鍔(つば)裕加里さん(34)は「明るくにぎやかな金沢に戻れるその時まで、希望を持ち続けたい」と話す。(小佐野慧太)
 大広間の明かりは、犀川を挟んだ北陸最大の繁華街の金沢・片町から望むことができる。闇夜に浮かぶ「つば甚」の明かりは、何やら楽しいうたげが料亭内で開かれているみたいだ。鍔さんは「コロナ禍で大変な思いをしている片町の飲食店の皆さんにも、元気を届けられれば」と願う。
 四月に新型コロナウイルスの「第四波」が広がり、「つば甚」も予約の入らない日が増えた。予約がなければ、室内はもちろん、玄関の照明も消していた。
 「『つば甚』の明かりがついていないと寂しい」。鍔さんは地域の人からそんな声を耳にした。「照明をつけるだけで、地域の人の気持ちを明るくできるのかも」と考え、取り組みを思い立った。
 県の緊急事態宣言を受け、十二日から明かりをつけ始めた。現在は金沢を代表する料亭の「金城楼」(同市橋場町)も賛同し、正面玄関と表通りに面した照明をともしている。金城楼の土屋兵衛(ひょうえ)社長は「街を歩く人に少しでも元気になってもらえれば」と話す。両店とも、照明をつけるのは時短要請の営業時間に基づき午後八時までにしている。
 まん延防止等重点措置の適用に伴う酒類の提供自粛の要請に、鍔さんは「料亭の文化はお酒とともにあった。店の経営は正直どうなるか分からない」と声を沈ませる。ただ、明かりのともった立派な建物を眺め、「気持ちだけは前向きでいたい」とつぶやいた。

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