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本紙獣医師記者バッサリ!ケンタッキーダービーの『ドーピング案件』は世界的名伯楽の「極めてお粗末なミス」

2021年5月14日 06時00分

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メディーナスピリット(AP)

メディーナスピリット(AP)

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 1日に行われた米三冠競走の初戦「ケンタッキーダービー」(G1・チャーチルダウンズ・ダート2000メートル)で1着に入ったメディーナスピリット(牡3歳、米国・B・バファート)の競走後検体(血液)が禁止薬物ベタメタゾンの陽性を示し、失格の可能性が浮上している。問題のベタメタゾンは、ステロイド系消炎剤。高校生物では副腎皮質から放出されるステロイド系ホルモンとして鉱質コルチコイド、糖質コルチコイドの2種を学ぶが、ベタメタゾンは糖質コルチコイドの1種だ。人ではアトピー性皮膚炎などの強力な消炎剤として「ステロイド剤」が使われるが、これと同系統の薬だと言えば、イメージがわくだろうか。
 米国競馬のルールでは競走14日前からは投与が禁止。AFP通信が12日に伝えたところによると、検出レベルは21ピコグラムと微量で、積極的に能力向上を狙う種類の悪質な事案ではなさそうに思える。ただ、意図せぬ混入(コンタミ)による不幸な事故だったかと言えば、どうやらそうでもなさそうだ。世界的な名伯楽の厩舎で起こったこととしては、極めてお粗末なミスだ。
 当初、投与歴はないと潔白を主張していたバファート師だったが、前述のAFP伝で心当たりとして4月27日に「オトマックス」という薬剤を皮膚炎治療のため使用したと話した。
 日本でも使われる動物用医薬品だが、もっぱら犬の外耳炎治療薬だ。抗生物質などとともに主要な有効成分としてベタメタゾンを含む。米国でも同じ薬剤が流通しているが、米国販売元の仕様書にも適用は「犬の外耳炎」とある。
 動物用医薬品を想定される動物種以外に使うこと自体はあることだ。特に抗菌薬や抗真菌薬ではしばしばある。ただ、ドーピングコントロールが厳格な現役の競走馬や馬術競技馬だけは特段の注意が必要になる。
 多くの馬用医薬品は、競馬や馬術のドーピングルールを前提として、丁寧に競走前の休薬期間などを示した注意書きを添付している。それぞれ覚えておくのも現場の臨床獣医師の務めだが、これらの注意書きが人的エラーを重ねて防ぐ。こうした理由から、今回のバファート師の件は、なんともかばいようがない。

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