本文へ移動

広まるビジョントレーニング 集中力や読み書き改善も

2021年5月13日 05時00分 (5月13日 05時00分更新)
休み時間に集中してビジョントレーニングに取り組む児童たち=福井県越前市の大虫小学校で(一部画像処理)

休み時間に集中してビジョントレーニングに取り組む児童たち=福井県越前市の大虫小学校で(一部画像処理)

  • 休み時間に集中してビジョントレーニングに取り組む児童たち=福井県越前市の大虫小学校で(一部画像処理)
 目を動かす力を高める「ビジョントレーニング」が学校現場で広まっている。目の筋肉の動かし方が未発達だと、集中力が続かない、読み書きや球技が苦手、けがをしやすいといった状態になる可能性がある上、本人や周囲が気付かないケースがほとんどだという。トレーニングによって一カ月で改善された例もある。 (北村希)
 三月中旬、福井県越前市大虫(おおむし)小の三年生の教室。二十分休憩に入ると、保健委員が作った動画がスクリーンに流れだす。「一、二、三、四」。掛け声に合わせ、児童は親指を立てて肩幅に離した両手を交互にキョロキョロ見る。両手は上下、斜めに離したり、片手を円状に動かしたりし、目で追う。
 次はスクリーンに不規則に並んだ数字を一から順に素早く探すゲーム。集中する児童らで、教室は静まり返っていた。約六分で終了。伊藤葵君は「顔は動かさず目だけ動かすのがポイント。一年生の時からやってるから、どんどんスムーズにできるようになった」と教えてくれた。
 福井県は二〇一五年、目に良い習慣の一つとして小中学校にビジョントレーニングを導入。各校の養護教諭を中心に進めている。大虫小では週一回、全校で実施。養護教諭の羽生有実(はにゅうゆみ)さんは「目の周りの筋肉をほぐし、視力低下やけがの防止につながる。タブレットやスマートフォンの普及で、より必要性を感じている」と話す。
 全国の学校や教育委員会向けに研修する一般社団法人視覚トレーニング協会代表の北出(きたで)勝也さん(52)によると、ビジョントレーニングは▽素早く焦点を合わせる▽目と体の動きを協調させる▽形を認知する−など視力以外の見る力を高める。例えば、線を目でしっかり追えず形の認知力が弱いと、図形の読み取りや漢字の書き取りが苦手な傾向にある。目を動かす力を鍛えると、集中力や読み書きの正確さ、バランス感覚が上がるという。
 北出さんはペンを使う基本トレーニング=図=の他、相手のポーズをまねる体操、言葉探しなどゲーム感覚でできる二十種類以上を提唱。研修を受けた神戸市内の養護教諭が今年一〜二月に児童百人超に行った調査では、週三回、朝の会で約三分の訓練を一カ月続けた結果、五分間に写せる文字の数が二割超増えた。北出さんは「最近は目も体も自然に動かせる外遊びが減っている。意識的に動かす時間をつくって」と呼び掛ける。

見え方の問題 気付きにくい

 愛知県常滑市大野小では昨年夏、通常学級のある男児が休みがちになった。男児は字をすらすら読むこと、漢字を覚えることに課題を抱えていた。矯正視力は一・〇以上だが、見え方を調べると、本を机に垂直に立てないと焦点が合いにくいと判明。本人も家族も気付いていなかった。
 同校の特別支援学級では二〇一三年から、担任の公文(くもん)美貴教諭がビジョントレーニングを取り入れており、男児は公文教諭の指導で訓練と学習を繰り返した。一カ月後、漢字が正しく書けるように。今では本を机に寝かせたまま読み、漢字を書きながら話す余裕も生まれている。
 北出さんによると、見え方の問題は周りから気付きにくい。その上、日本の学校健診では、目の動きなどを調べる視覚機能検査まで行うのはごくわずかだ。目の動きに問題を抱える子は増えている可能性があり、読み書きが苦手など課題の有無にかかわらず、皆で一緒に訓練に取り組む必要性を訴える。

 ビジョントレーニング 1960年ごろ、米国で発達障害や学習に困難がある子ども向けに始まった。米国では訓練を行う専門職の国家資格があり、北出さんも取得している。日本では90年代に導入され、スポーツ界や教育現場で広がってきた。


関連キーワード

おすすめ情報

学ぶの新着

記事一覧