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入管収容で死亡 許されぬ人権軽視だ

2021年5月11日 05時00分 (5月11日 05時00分更新)
 日本語を学び、母国で語学学校を開くことを夢見たスリランカ人女性が三月、名古屋出入国在留管理局の収容施設で亡くなった。その死は、審議中の入管難民法の改正案にも課題を突きつけている。
 亡くなったのは母国の大学を卒業後、二〇一七年に留学ビザで来日したウィシュマ・サンダマリさん(33)。日本語学校の学費が払えなくなり、退学。不法滞在で国外退去を命じられ、二〇年八月に収容された。徐々に体調が悪化し、今年三月六日に死亡した。
 難民らを支援する市民団体、START(名古屋市中区)によると、嘔吐(おうと)を繰り返し「収容後、二十キロやせた」と話した。点滴投与や入院治療、一時的に拘束が解かれる「仮放免」も求めたが、いずれも認められなかったという。
 上川陽子法相が調査を指示し、法務省が四月上旬にまとめた中間報告はなぜ入院治療させなかったのかさえ、明確にしていない。死因が特定されず、医師が仮放免を勧めていた事実も盛り込まれないなど中身は不十分だ。再発防止につなげるためにも、誠実な調査に基づく最終報告を強く望みたい。
 まさに今、国会で審議されている入管難民法の改正案は、国外退去を命じられた外国人が帰国を拒むなどして、常態化する長期収容を解消する狙いがある。国外退去を拒否する人に刑事罰を科したり、難民認定の手続き中でも送還できるようにしたりする内容だ。
 自国に戻れば死の危険もある「難民」に対し、わが国の認定率の低さはかねて指摘されている。国連難民高等弁務官事務所や国連人権理事会の特別報告者は、改正案はさらに「人権に配慮を欠く」などとして懸念を表明している。
 STARTによると、ウィシュマさんは元交際相手に脅されており、母国に戻ると身に危険が迫ると訴え、日本への残留を望んでいた。長期収容を避けるため、当事者の事情は考慮しない入管の「送還一本やり」の姿勢が、今回の悲劇の背景にあると批判する。
 入管施設における外国人の死は毎年のように報告されている。「ブラックボックス化」も指摘される入管の権限や裁量を広げる改正案が、このまま採決されることには疑問が残る。
 「日本人は優しい」と母国の教え子たちにも来日を勧めていたというウィシュマさんの死を受け、母親は「娘は動物ではなく、人間だ」と泣き叫んだという。こうした悲劇が繰り返されないための法改正であるべきだ。

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