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同じ無観客でも大阪とは全く別の世界を見たような気がした…大関陣は全員勝ったがこの強さがいつまでもつか楽しみである【北の富士コラム】

2021年5月10日 05時00分

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無観客の国技館で土俵入りする幕内力士

無観客の国技館で土俵入りする幕内力士

◇9日 大相撲夏場所初日(両国国技館)
 夏場所が始まった。3日目までは無観客で行われる。去年の春場所で無観客は経験しているので、いつものように場所入りし館内を見渡したが、同じ無観客でも大阪とは全く別の世界を見たような気がした。
 相撲の聖地、殿堂と言うべき国技館は常に満員のお客さんであふれ、活気に満ちていた。もしかしてこのまま相撲が消えてしまうのではと、余計な心配をも禁じ得なかった。心細さに放送に入っても、なかなか気持ちが乗ってこず、アナウンサーの質問にもよく反応できなかった。
 それでも後半戦に入るころには次第に気分も乗ってきた。初日から4大関はそれぞれ強敵との対戦。まず照ノ富士が登場、相手は明生。着実に力を付けているだけに油断はできない。立ち合い、照ノ富士は頭で当たってくる明生に対し、いきなり右を差しに出る。この立ち合いは腰高で照ノ富士の失敗と言える。
 明生は得したとばかり左を差し、右も深く差し込んでいい体勢となる。ここで照ノ富士は大きな相撲を見せた。いきなり引っ張り込んで、かんぬきできめ続けて右からの小手投げで強引に振り回し、豪快にきめ出した。内容は良くはなかったが、照ノ富士の意欲は十分に感じ取れたと思う。それと優勝への決意の固さが見て取れた一番であった。
 もし番狂わせがあるとしたら正代あたりが一番危ないと思ったが、正代がいい踏み込みを見せ、押し相撲の北勝富士の出足を止めた。これが勝因となる。正代の差し身のうまさは知る人ぞ知る。器用にもろ差しになると、苦しい体勢の北勝富士が何とか突き放そうとする瞬間をタイミング良くはたくと、北勝富士はあっさり土俵に落ちた。正代の快勝というより、北勝富士の稽古不足が手に取るように見て取れた。
 押す力士は四つ身の力士より三倍稽古が必要と昔から言われている。幕下相手にお茶をにごすような稽古で勝てるわけがない。押し相撲がああも簡単に前に落ちるようでは話にならない。反対に動向が不明で心配された貴景勝は元気いっぱいを感じさせた。
 左右のおっつけで力を付けてきた若隆景に何もさせずに電車道。少しは横にそれたが手も出る、足も出る理想的な相撲であった。先場所のダイエットが体になじんできたようだ。非常に動きが良い。今場所の貴景勝は期待してもいいかもしれない。
 朝乃山は少しばかりヒヤリとさせた。大栄翔の当たりと突っ張りに一気に土俵際まで押された。やられたかに見えたが、無意識に左から突き落とすと、勢いづいた大栄翔が体勢を崩し土俵を飛び出した。もし大栄翔の右が胸に命中していたら朝乃山は残せなかっただろう。反省を要する相撲であった。
 大関陣が初日に全員勝って、胸をなで下ろしている場合ではない。必ず大関陣から優勝を出さないことには大関の名が泣くというものだ。さてこの強さはいつまでもつことやら楽しみである。
 やはり初日は私も緊張していたようで、少し疲れたみたい。帰宅すると食卓の上に、なぜかたこ焼きが置いてある。それも2人前。銀だこのたこ焼きなんぞ注文した覚えがないので、若い者に聞いたら、どうやら天ぷらの「かき揚げ」を2つ買っておくように言ったのを「たこ焼き」と間違って買ってきたと判明。仕方がないから今夜は「たこ焼き」で済まそうか。
 本当は自然薯(じねんじょ)のそばをゆでて「天ぷらそば」を食べるつもりでした。それではこの原稿を送ったら、早速「そば」をゆでますか。お休みなさい。(元横綱)
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