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浜松まつり 最終日、雨もなんのその

2021年5月7日 05時00分 (5月7日 05時03分更新)
真剣なまなざしで凧糸を引く参加者=浜松市南区の凧揚げ会場で

真剣なまなざしで凧糸を引く参加者=浜松市南区の凧揚げ会場で

  • 真剣なまなざしで凧糸を引く参加者=浜松市南区の凧揚げ会場で
  • 参加町のトラブルがないか会場で見守る統監部=浜松市南区の凧揚げ会場で
  • 御殿屋台を新しく造る「山手組」=浜松市中区山手町で
 浜松まつりが最終日を迎えた五日、浜松市南区の凧揚げ会場は、降りしきる雨に負けない参加者の熱気に包まれた。新型コロナウイルス感染拡大で規模を縮小した中での開催だったが、実際に参加して感じた思いは各町でさまざま。感染対策で引き回しが中止となった御殿屋台を新たに造る町もあり、参加者たちは早くも来年に向けて思いを寄せた。

◆やって良かった でも物足りない

 コロナ禍で参加した町が例年の半分にとどまった浜松まつり。南区の凧揚げ会場では五日、伝統を絶やさないとの思いで参加した各町の関係者が「やって良かった」と評価した一方、糸切り合戦や御殿屋台の引き回しがない異例のまつりに寂しさを感じた人もいた。
 小雨が降る中、午前十時に開始を告げる花火が鳴り響くと、薄暗い空に三十枚ほどの凧が一斉に舞い上がった。「参加が少なかった昔の浜松まつりを思い出す。観客もいなくて寂しいね」。中区田町「た組」の野中正平さん(74)は、若者が揚げる姿を見守りながらつぶやいた。「伝統のために、凧揚げだけでも絶対に参加したかった。無事にできて良かった」と語った。
 「仲間が弟にも凧糸を持たせてくれた。うれしそうだった」。東区天竜川町「天龍川組」の牧野良三さん(62)は、左手で凧糸を引く弟の武久さん(61)の姿に目を細めた。武久さんは三年前の脳梗塞で後遺症が残り、特に右手の力が入りにくくなった。「兄弟で三十年ほど前から参加している。二年ぶりだったがやっぱりうれしい」と笑顔だった。
 終盤に差し掛かり熱気が高まると、人が密集するため中止だった「糸切り合戦」に発展しそうな場面も。中にはマスクが外れても「おいしょ」と掛け声を出し、糸を絡め合う人もいた。
 中区早出町「早出連」の東秀行さん(49)は、そんな様子を横目に「町の参加者を『少数精鋭』にして、安全第一に凧を揚げている」と冷静だった。「糸切り合戦が禁止なので正直、物足りなさはあった。屋台や練りもなく、まつりの雰囲気とは少し離れている」と複雑な思いも口にした。
 会場には感染対策を呼び掛ける掲示があり、ほとんどの参加者はマスク着用や鳴り物禁止といったルールを守っていたが、中には対策が緩む人も。三日間参加した女性(43)は「会場の隅で酒を飲み、酔っている人も見掛けた。来年以降の開催に少し不安がある」と漏らした。 (山本晃暉)

◆統監部が巡回 「糸切り」阻止

 浜松まつりの三日間、グレーの制服と制帽を身に着けた組織委企画統制監理部(統監部)のメンバーは、南区の凧揚げ会場を見回り、暴力行為や規律違反の撲滅に務めた。今年は新型コロナの感染対策の徹底にも一役買った。
 四、五人ずつのメンバーに分かれて巡回。参加町同士の凧揚げ中の衝突などに目を光らせ、感染防止のため禁止されていた「糸切り合戦」に発展しそうな場面にも立ち会って警戒した。感染対策のために設けた検温所では、関係者の体温や名前などを管理した。
 伊藤安男部長はまつり終了後の取材に「大きなトラブルもなく、感染対策を徹底した上で、来年につながるまつりをできて良かった」と話した。 (坂本圭佑)

◆御殿屋台を新造へ 中区・山手組

 中区山手町の「山手組」は、御殿屋台を新しく造っている。四月に着工し、組のまつり参加五十年に当たる二〇二三年に完成目標。蓄電池を搭載することで地域防災にも貢献。「屋台を町のシンボルに」との参加当初からの悲願を実現する。
 制作中の屋台は高さ四・六メートル、幅二・八メートル、奥行き四・四メートルで、彫刻は検討中。一二年に同区佐鳴台の「般若連」が造り、周りの八町全てが屋台を持ったため、地元でも機運が高まり、自治会長らを中心に計画を進めてきた。屋台には通常二台の発電機を使うが、蓄電池を搭載し非常用電源として活用する。
 住民たちも待ち望んでいた。ある住民は御殿屋台で演奏しようと、七十歳を超えて三味線を習い始めた。今年は鳴り物が禁止でなければ、子どもラッパ隊長を務める予定だった小学六年の鈴木理華さん(11)は「二年連続で参加できなくて悲しいけれど、またまつりに参加したい」と言い、おはやしにも興味を示した。
 山手組は伝統を守るため、まつりで凧を揚げた。御殿屋台建設委員会の田代浩史委員長(48)は「普段と異なる形だが、参加できてよかった。御殿屋台の制作を通じて、伝統文化の継承の機運を高めたい」と話した。 (広瀬美咲)

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