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<三河撮りある記>(72) 豊川市の本宮山

2021年5月9日 05時00分 (5月16日 10時37分更新)

 風にそよぐ新緑、森を包む土のにおい、耳に届く野鳥のさえずり…。五感をくすぐられながら、木漏れ日の登山道を歩く。

スギに囲まれた登山道が続く本宮山。地面から見上げると、真っすぐに伸びる木々と山歩き用のつえが重なった=豊川市で

 豊川、新城、岡崎の三市にまたがる本宮山(七八九メートル)。豊川市側の麓にある市ウオーキングセンターから山頂までの登山道(約四キロ)は、老若男女が楽しめるハイキングコースとして人気を集めている。
 山頂付近に三河国一宮・砥鹿(とが)神社(豊川市)の奥宮があり、古くから信仰の山として親しまれてきた。登山道は奥宮への表参道でもある。入り口などに鳥居が立ち、道端には参拝者の目安となるよう、一〜五十町(丁)の石標が麓から順に設けられている。
 四月下旬、記者も山頂を目指した。カラフルなウエアの若者や子どももいたが、中心は中高年。近くに住む伊藤清智さん(84)は「健康づくりのため」と六十歳から週三日登る。木製のつえを手に「天気が良けりゃ富士山が見える。それが楽しみ」と顔をほころばせた。
 青空に伸びる針葉樹林を通り抜け、二十一丁目から道は険しくなる。すれ違う人たちとあいさつを交わしながら、急な岩場や木の根っこが張り出した斜面をはい上がった。
 奥宮に続く石段を登るにつれ、林立するスギの幹が太くなるのに気付く。神域として保護されてきた奥宮一帯の自然林は、県指定の天然記念物。二時間かけてたどり着いた奥宮には、根回り十一メートル、樹高三十メートルの御神木がそびえていた。
 境内には富士山遥拝所があり、気象条件がそろえば白銀のシルエットを拝むことができる。山頂は奥宮からさらに歩いて十分ほど。東三河の平野部や三河湾を一望できた。
 山頂付近では各地から一人で訪れた愛好家同士が声を掛け合い、情報交換したり、弁当を囲んだりする光景も。豊川市内の加藤俊二さん(66)は「何度も登るうちに顔見知りになり、言葉を交わす。自然の社交場みたいになっている」と教えてくれた。
 人々が行き交う道は二十年ほど前から地元住民らでつくる「ボランティア本宮山の会」が整備している。「子どもからお年寄りまで安全に楽しめるように」と代表の池本繁さん(72)。メンバー十人が月二回、雨水で土が流れ出さないよう木材で杭(くい)止めしたり、草を刈ったりする。「みんなから『ありがとう』『ご苦労さん』と言ってもらえると、やっぱりうれしいね」
 山岳雑誌には「何度も登りたくなる山」として紹介される本宮山。足しげく通う人が絶えない理由を垣間見た気がした。
 文・川合道子 写真・太田朗子

 本宮山登山 山頂へは複数のルートがあるが、豊川市ウオーキングセンター(上長山町)からが一般的。センターは無料駐車場やトイレを完備し、案内マップも手に入る。開館は午前8時半〜午後5時。月曜休館。近くに日帰り入浴施設「本宮の湯」がある。山頂へは本宮山スカイラインが通じ車でも行ける。(問)ウオーキングセンター=0533(93)7961

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