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病院の特色 医師ら発信 書籍の刊行相次ぐ

2021年5月4日 05時00分 (5月4日 10時05分更新)
 医療が高度化する中、患者向けに、施設の特色や治療情報などをまとめた書籍を発行する病院が相次いでいる。いずれも院長自らリーダーシップを発揮し、分かりやすく工夫しているのが特徴。インターネットに慣れていない人が多い高齢患者らに歓迎されているほか、病院の得意分野を知ってもらえば周辺の医療機関との連携を強めることにも結びつく。 (編集委員・安藤明夫)

患者向け丁寧に解説

 名古屋市港区の中部ろうさい病院が四月に発行した「決め手はチームワーク医療 患者さんに・ご家族に・地域に寄り添う中部ろうさい病院」(千百円)。指揮を執ったのは、昨年四月に着任した院長の佐藤啓二さん(70)だ。医師ら六人で編集委員会をつくり、執筆を呼び掛けた。

「決め手はチームワーク医療」を手にする中部ろうさい病院の佐藤啓二院長


 書籍は「チームで作る高度医療」「地域を牽引(けんいん)する最新治療」の二つのパートからなる。さまざまな専門性を持つ人が治療やケアに当たる先端医療の現場を反映し、医師や看護師、理学療法士など多様な職種のスタッフが登場。脳卒中や認知症、同病院が得意な整形外科領域の首のヘルニア、大腿(だいたい)骨骨折の手術など取り上げる症状、治療も多岐にわたる。「写真やイラストを多く使い、とっつきにくい専門用語はできるだけ除いた」と佐藤さんは言う。
 佐藤さんが、広報が目的の書籍を手掛けるのは二度目。前任の愛知医科大病院長時代の二〇一八年には「元気ホスピタル−最善の医療をめざして」(千九百八十円)を作った。どんな治療ができるかを詳しく発信した結果、周辺の医療機関にも病院を知ってもらうことができ、スタッフの士気が上がった。
 中部ろうさい病院は、労働者健康安全機構が運営する公的病院だ。国が一九年九月に公表した公立・公的病院の再編・統合のリストには入っていないが、今後の取り組みによっては対象になる可能性も。同市内の主要書店や院内の売店で買える広報本には、地域での存在感を高め、利用者や他の医療機関からの紹介患者を増やす目的もある。
 富山市の富山大病院は昨年六月、一七年に発行した本の改訂版「ここがすごい!富山大学附属(ふぞく)病院の先端医療」(千九百八十円)を出した。一冊目は、こうした分野では異例の二千部が売れた。院長の林篤志さん(57)は「大学病院のハードルが高かったことの表れ」と説明。「本を手に受診する人もいて、予想以上に好評だった」と振り返る。改訂版は、医療の進歩に対応し、膵臓(すいぞう)がんの新しい検査や治療、手術支援ロボット「ダビンチ」の活用、そして新型コロナウイルスとの闘いなど十一項目の最新トピックスを加えた。
 一九年度の病院事業収益が約三百四十億円と、自治体病院では全国トップを誇る岐阜県の大垣市民病院が、昨年一月に出した本のタイトルは「強さの秘訣(ひけつ)」(千九百八十円)。同病院は学会発表が多いことでも知られ、院長の金岡祐次さん(63)は「医学生や臨床研修医にもスタッフの探究心を知ってほしい」と話す。将来は戦力として加わってもらうのが狙いだ。国内最多の千四百三十五床を持つ愛知県豊明市の藤田医科大病院は、昨年八月に「日本トップクラスの治療力 藤田医科大学病院」(千六百五十円)を出版。医師七十六人が最新治療や研究、設備について書いた。
 一連の広報本を手掛けた「バリューメディカル」(東京)によると、中部九県では福井大病院、浜松医科大病院、静岡県藤枝市の市立総合病院、滋賀医科大病院を含め計九病院が出版。全国では大学病院、公立・公的病院を中心に三十四病院が発行している。出塚太郎社長は「住民が地元病院の全体像を知ることができる手段は少ない」と指摘する。受診しても医師と話せる時間は短い上、病院のホームページも多くは専門用語を使った診療科の紹介が中心だ。
 ネットにあふれる医療情報は真偽の判断が付きにくい。特に、ネットに不慣れな人が多い高齢者にとって、紙の本は心強い。「身近な病院の先生が自ら発信するという信頼感が強み」と意義を語る。

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