本文へ移動

特別支援学校の子らに「副学籍制度」 誰もが仲間 地域の一員

2021年4月29日 05時00分 (4月29日 05時00分更新)
休み時間に副学籍教室で一緒に足湯を楽しむ児童たち=長野県飯島町の飯島小学校で

休み時間に副学籍教室で一緒に足湯を楽しむ児童たち=長野県飯島町の飯島小学校で

  • 休み時間に副学籍教室で一緒に足湯を楽しむ児童たち=長野県飯島町の飯島小学校で
 特別支援学校に通う児童生徒が、自宅近くの小中学校にも籍を置き、地域の一員として学び合う制度「副次的な学籍」(副学籍制度)が広がっている。小中学校の児童生徒にとっても、障害や多様性への理解が深まる「インクルーシブ教育」が期待される一方、教員や保護者の負担増といった課題もある。(北村希)

近くの小中学校で学び合う

 二月下旬、長野県飯島町の飯島小。副学籍制度の一つとして空き教室を活用した「副学籍教室」には、県伊那養護学校(伊那市)に在籍する児童三人が週に一回通う。「失礼しまーす」。休み時間になると、周りの教室から十人以上の飯島小児童が自然と集まってきた。一緒に手作りの足湯を楽しんだり、パズルに取り組んだり。三人は通常学級に交じって図書室で学習し、給食を食べた。突然大きな声を出すことがあっても、周りの児童は驚かなかった。
 伊那養護学校に通う児童生徒が住む九市町村では、全てに副学籍制度がある。二〇〇五年に駒ケ根市が県内で初めて導入し、広がった。運動会や遠足、朝の会への参加、学校便りの共有など形、頻度はさまざまだが、二〇年度は伊那養護の百二十一人のうち七十八人が利用した。
 飯島小の制度は、休憩や介助が必要な副学籍児童専用の教室があるのが特徴で、二〇年度に始まった県内初の試みだ。短時間にとどまらず一日中過ごせるようになった。
 制度ができた背景には保護者の葛藤がある。特別支援学校は、より専門性の高い組織として個別に対応してもらえる一方、「住み慣れた地域とのつながりが途絶える」との懸念が消えない。保育園が一緒だった友達や、地域の学校に通うきょうだいとは離れた別の環境。実際、飯島小に副学籍がある三人は、車で片道四十分以上の伊那養護学校へ通っている。特別支援学校の子は副学籍制度が整うまで、中学校の名簿が基準となる成人式の案内も届かなかった。
 こうした悩みに寄り添う副学籍制度。飯島小では全校のロードレース大会で、副学籍の子が地域の人から下の名前で応援を受けるなど、一員として認知されているという。宮下富士子教頭は「子どもたちは大人が思った以上にいつも通り接している。さまざまな個性を持つ相手に合わせた行動が、自然と身に付くと思う」と期待する。
 県の担当者は「新型コロナウイルスの影響で交流回数は減ってしまったが、(国のGIGAスクール構想で小中学生に配備中の)一人一台のタブレット端末を活用した新たな可能性も模索したい」と話している。

人員足りず「国は補助を」

 副次的な学籍は、二〇〇五年ごろに各地域で自主的に始まった取り組みで、国が定める指針や法律、補助制度はない。文部科学省は、小中の学習指導要領で規定する「(障害のある子とない子の)交流及び共同学習」の好事例として、報告するにとどまる。
 山梨大の吉井勘人(さだひと)准教授(特別支援教育)が二〇年に共同発表した調査によると、副次的な学籍を実施するのは長野、岐阜、東京など七都県と浜松市など三政令市。開始間近や検討中なのは静岡、滋賀など七県と一政令市で、今後も増える見込みだ。
 一方で、制度を利用する児童生徒には原則、教員や保護者の引率が必要。小中学校と特別支援学校それぞれの教育課程を調整する必要もあり、人手と時間が求められる。長野県では引率や調整を担う「副学籍コーディネーター」四人、埼玉県では児童生徒の介助を手伝うボランティアを、それぞれ県独自の予算で配置している。
 長野県副学籍コーディネーターの前林広志さんは「目指すところは『交流』ではなく日常的な『共生』。実施回数を増やしたいが、人員が足りずなかなか難しい」とジレンマを語る。
 吉井准教授は「全国的に交流頻度は年に数回と、まだ限られている所が多い印象。広げるには国の補助は必須で、国にもっと強く音頭を取ってほしい」と求める。文科省の担当者は「法や指針に縛られない多様な現在の実態を、引き続き尊重したい」と話す。

関連キーワード

PR情報

学ぶの新着

記事一覧