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 鈴鹿医療科学大(三重県鈴鹿市)薬学部長 大井一弥さん(58) 皮膚と内臓の炎症追究

2021年4月27日 05時00分 (4月27日 10時17分更新)
 日本薬学会の佐藤記念国内賞を、先月受賞した。米国立衛生研究所で活躍した日系米国人、佐藤芳夫博士(一九一一〜七二年)をたたえ、臨床・疫学分野で優れた業績を上げた国内の研究者に贈られる。同学会最高の栄誉とされ、さまざまな皮膚疾患を引き起こす「乾燥皮膚」に関する研究が認められた。

佐藤記念国内賞を受賞した大井一弥さん


 三重県熊野市生まれ。大学卒業後、三重大医学部の研究助手になり、未知の領域を切り開く楽しさを知った。受賞は、五つの医療機関とともに、長年にわたり人工透析患者や高齢患者を対象に研究を続けた成果だ。皮膚の乾燥は加齢や湿度低下のほか、臓器の炎症が影響していることなどを明らかにした。
 「内臓に炎症性の疾患がある高齢者は、皮膚がカサカサになるケースが多い」と気づいたのは、同県四日市市の病院で働いていた三十代のころ。「ただ、実証する人がいなかった」と振り返る。城西大准教授を経て鈴鹿医療科学大に赴任後の二〇一五年、小腸炎、大腸炎を発症させたマウスの皮膚変化を証明した英語論文が脚光を浴びた。
 医師は、皮膚の状態に目が届きにくい。病院で終末期のがん患者が「かゆくて眠れない」と苦しんでいた時のことだ。睡眠導入剤の量を増やそうとした医師に対し、薬剤師として保湿剤を提案。乾燥が改善され、睡眠が取れるようになった。こうした経験から、医師向けの講演では、皮膚水分測定器を「私の聴診器」と言って見せ、皮膚チェックの重要性を強調する。
 もう一つ、力を入れるのが、貼り薬がもたらす皮膚の炎症に関する研究。超高齢社会の今、嚥下(えんげ)機能が落ちた患者らに貼り薬を使う例が増えているが、長く使うと、かゆみや痛みを訴える人が多い。「患者さんに還元できてこそ研究」という強い思いが全ての原動力だ。
 学生には「熱意」の大切さを説く。呼吸音や心音、血圧などを測定できる人型シミュレーターを薬学部内に設置し、「薬剤師も患者さんの状態を把握できる力を」と呼び掛ける。三重大病院内に、薬剤師のセカンドオピニオンとして院外の患者が利用できる「お薬相談外来」を設けて九年。同僚の教員とともに不安や疑問の相談に乗る。「薬剤師の役目は医師の下での業務だけでない」と強調。「「学生の『患者さんを治す』というマインドを高めたい」 (編集委員・安藤明夫)

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