回り道して見えたものは 芸大卒の和菓子職人
2021年4月19日 16時00分 (4月19日 16時00分更新)
愛知県豊橋市の老舗和菓子店で、難病を抱えながら、毎月、店の看板商品「上生菓子」を開発し続けている職人がいる。芸術大卒という異色の経歴を持つ石川未紗さん(34)だ。病気で一般企業を退職後、父と同じ店に再就職。写真映えする商品づくりを任される立場となった。「和菓子をもっと身近な存在にしたい」と新境地開拓に向けて挑戦している。 (酒井博章、写真も)
あんこを炊く甘い香りが漂う豊橋市南小池町の「お亀堂」本社工場。石川さんは五月発売予定の新作に取り組んでいた。端午の節句に合わせたこいのぼり形で、目と小さな胸びれにようかんを使い、愛らしいデザインながら細部までつくり込んだ。「目がかわいくて良い」。試作品を見ながら、満足げにうなずいた。
父の行人さん(65)もお亀堂で働く職人だが、幼少期は「和菓子職人にだけはなりたくない」と思っていた。保存料を使わない昔ながらの製法を守る店では、日の出前から作業するのが習慣。「お盆も店の繁忙期だから、休みも取れない。父を尊敬していたが、同じお菓子なら『ケーキ屋の子どもが良かった』とも思っていた」と言う。
名古屋芸術大(愛知県北名古屋市)のテキスタイルデザインコース...
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