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石碑が教える災害への備え 不鮮明な文字光で判読  

2021年4月15日 05時00分 (4月15日 09時56分更新)

 美浜の研究者 調査に協力



 此処(ここ)より下に家を建てるな−。津波などの災害が記された古くて不鮮明な石碑の文を最新技術で判読し、防災に役立てる取り組みが進められている。碑文に光を当てて撮影し、文化財防災センター(奈良市)研究員の上椙(うえすぎ)英之さん(44)が開発した専用アプリで読み解く。東北地方の調査には美浜町の若狭路文化研究所長の多仁(たに)照広さん(73)が協力。東日本大震災では碑文をもとに津波被害を免れた例もあり、近い将来に発生する確率が高いとされる南海トラフ巨大地震への備えとしても関心を集めそうだ。 (高野正憲)

災害に関する歴史資料を残す意義を語る多仁さん=美浜町菅浜で

上椙英之さん

 近世近代史研究者の多仁さんは歴史資料の修復、保存の第一人者で、東北地方で約二百枚を撮影。「石碑の記録を残すことで次の災害に備えることができる」と訴える。
 岩手県宮古市にある「大津浪(おおつなみ)記念碑」は、一八九六(明治二十九)年と一九三三(昭和八)年に集落を襲った津波の到達地点(海抜六十メートル)に立つ。「津浪は此処まで来て、部落は全滅し生存者僅(わず)かに前に二人、後に四人のみ。幾歳(いくとせ)経るとも要心(ようじん)あれ」とある。教えを守り、高台に住宅を建てたこの集落は、東日本大震災で津波が石碑の手前まで迫ったが被害はなかった。
 津波に限らず洪水、噴火、台風など、災害の記憶を後世に伝える石碑は各地に存在する。多くが江戸期から昭和時代に建てられており、雨風による表面の風化やかびの繁殖で老朽化。肉眼で読みにくくなっているものも多い。

「ひかり拓本」を取るため石碑にライトを当てる上椙さん=岩手県陸前高田市で(上椙さん提供)

 判読に使うのは碑文の画像を加工する「ひかり拓本」。石碑に懐中電灯で光を当て、彫られた場所に現れる影を固定したカメラで撮影する。光の角度を変えながら複数枚撮り、専用アプリでモノクロで合成する。
 アプリは、東日本大震災で石碑の多くが流されたことをきっかけに現存する碑文をデジタルで残そうと開発した。データベース化には、文化財防災センターと東北大など各地域の研究拠点が連携している。
 二〇一二年から撮影を始め、画像は国内全域で約六百点。「ひかり拓本データベース」のホームページで、所在地の地図とともに順次公開している。都道府県別で最も多いのは宮城県の三十八点で、岩手県が三十点で続く。中部地方の画像はまだ公開されていない。
 上椙さんは市民の協力を得て未収集画像を増やそうと、近く合成アプリを一般公開する方針。「撮影が進んでいない地域もあるので、協力をお願いしたい」と画像提供を呼び掛けている。

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