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<今 教育を考える> 高校生の就職調査 リクルートワークス研究所・古屋星斗さん

2021年4月14日 05時00分 (4月14日 13時53分更新)
古屋星斗さん

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 高校卒就職を経験した約四千人の当事者らに調査した報告書「高校生の就職とキャリア」を、リクルートワークス研究所(東京)がまとめた。就活の内容は、その後のキャリアにどんな影響を及ぼしているのか−。分析から見えてきた現行の高校生の就活ルールの課題や改善点を、同研究所の古屋星斗(しょうと)研究員(34)に聞いた。 (河原広明)
 −調査で分かったことは。
 例えば高校卒就職の当事者四千人のうち「一社だけを調べて見て一社だけを受けて、一社に内定した」と回答した人が55・4%に上りました。学生の就活や社会人の転職では複数社を比較するのが普通でしょう。一方、高校卒就職は多くの地域で選考開始から一定期間は一社しか面接を受けられない「一人一社制」のルールがあります。行政、経済団体、学校の各関係者の申し合わせで毎年決められる、こうした特殊性がデータで浮かび上がりました。
 −離職について。
 10・7%が卒業後に最初に入った会社を半年以内に退職していました。大卒も含め若者の早期離職は課題とされて久しいですが、「一割が半年以内に退職」という数字は想像以上です。ただ、「そんなものでしょう」と言う高校の先生も。つまり「すぐに辞めるかもしれない」と思いながら指導してきたのです。教員は多忙で卒業後はノータッチなので仕方ない面もありますが、多くの関係者は長年、肌感覚で分かっていた。社会全体で放置してきたのです。
 −なぜか。
 生徒の卒業前に関わる文部科学省と卒業後に関わる厚生労働省という縦割りのはざまに落ちていたことが大きい。本来は学校での指導や就活のルールが卒業後のキャリアにどう影響しているか検証が必要なのに、縦割りで卒業前後のつながりが断ち切られ、そうした視点を持てなかった。ルールを設けた以上、効果を検証し、より良い仕組みを探るのは大人の責務です。
 −見えてきた改善点は。
 会社の比較は早期離職につながる就職・採用のミスマッチ軽減に役立つと裏付けられました。大学生のように十数社も比べる必要はなく、二、三社でも効果があります。
 −制度をどう変えれば。
 就活中に幾つも会社を見られる「複数応募制」や、希望の会社がある生徒は自由に応募し、そうでない生徒は一人一社制を用いる「希望応募制」も考えられますが、すぐは難しい。当面、現実的なのは一人一社制を維持しつつ、事前のキャリア教育で会社や仕事の比較を徹底する方法でしょう。教員だけでは対応できないので外部の力が必要です。生徒を多くの大人の目で支える。流れ作業ではなく、生徒一人一人に丁寧に目を向ける仕組みが求められます。

 ふるや・しょうと 一橋大大学院社会学研究科(教育社会学)修了。2011年に経済産業省に入省、17年から現職。本紙「学ぶ面」で28日から毎月第4水曜に「進路選択の新常識」と題してコラムを執筆する。

 調査概要 高校卒就職を経験した当事者と学校、企業の3者を対象に2020年9〜11月に実施。高校生の「就職」と「その後のキャリア」を関連付けた分析が特徴。当事者は就業2年以上で、最初の就職が正規社員だった39歳以下の就業者約4000人。学校への要望では「たくさんの会社をもっと見たかった」「会社での仕事内容をもっと詳しく聞きたかった」など情報不足の指摘が目立った。


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