本文へ移動

畔柳わずか5日間3試合で379球は“狂気の沙汰” 故障は人災…メジャースカウトが問題視するセンバツの球数

2021年4月10日 08時08分

このエントリーをはてなブックマークに追加
明豊―中京大中京 4回途中から2番手で登板した中京大中京・畔柳=3月31日、甲子園球場で

明豊―中京大中京 4回途中から2番手で登板した中京大中京・畔柳=3月31日、甲子園球場で

◆日本人初メジャースカウト大慈彌功さんコラム・拡大版
 2年ぶりとなるセンバツが無事に開催されたことは喜ばしい限りだった。各校の初戦を観察後、メジャーの視点から可能性を感じたのは市和歌山・小園健太、天理・達孝太、そして、中京大中京・畔柳亨丞の3投手であった。いずれも球質は良く、球速もメジャー先発投手の平均である147キロに達していた。
 重要視する腕の振りもスムーズで、将来的に致命的な故障を誘発するようなものではなかった。しかし、まだ高校生の身体。大舞台でのアドレナリンも加わり、余力のない目いっぱいのフォームで投げていた。
 達は頭が突っ込み肩を押し込むような投げ方で、畔柳はむちうち症を誘発するのではと心配するほど激しく首を振り、制球にも課題が見られた。小園はそれほどの癖はなかったが、体幹の弱さか、若干首を左方向へ振っていた。そのことにより軸がぶれ、腕の軌道も一定せず、制球にも影響を与えていた。
 今後の課題として、強靱(きょうじん)な身体に鍛え上げ、下半身主導で腕が振られるような投げ方を習得することができれば、制球、球速ともメジャーでも通用するまでに向上するはずである。また、高校生の場合は短期間で劇的に成長することもあり、夏も楽しみにしていた。
 ところが、大会が進むにつれ、このままでは球界の宝がつぶされかねないとの危惧へと変わっていった。今大会から導入された週7日間500球の球数制限。私から言わせれば、全くもって成長期の少年の身体を考慮していない制度である。
 強靭な身体を誇る選手が集まったMLBでも、故障予防の概念から2試合、中4日で先発した場合、6日間で210球前後に抑える。NPBでは2試合、中6日、8日間で多くても250球程度である。
 それがセンバツでは、達が3月20から29日までの10日間、3試合で459球を費やした。間違いなく左わき腹の故障につながっている。
 畔柳の場合は25から29日までわずか5日間、3試合で379球。狂気の沙汰としか言いようがない投球数である。そして31日には疲労困憊(こんぱい)の中での救援登板。31球投げ、右腕の故障につながっていった。軽傷であることを願うばかりだが、場合によっては数年は球速が戻らない可能性もある。
 プロ対象選手に限らず、過去にも酷使を強いられ、思うような投球ができなくなり、野球自体を楽しめなくなった方々を散々見てきた。私は、これらの故障は人災の要素が大きいと見ている。
 どのような策を講じたとしても、故障やけがは100%防げるものではない。しかし、最善の策を講じることにより、悲劇を最小限に抑えることはできる。ちなみに、市和歌山高校には申し訳ないが、小園の2回戦での敗退に安堵(あんど)した良心的な野球関係者は相当数いたはずだ。
 米国では、データに基づいて子供たちが故障する確率を考えて、細かいルールを設けている。7歳から2歳ごとにカテゴリー分けし、15~16歳は1試合の投球数が76球から最大95球、17~18歳は81~105球を数えれば、最低4日間は投球禁止になる。
 また、日本以外すべての国で、同年代の投手には米国に準じた球数制限が導入されている。先週開催されたパナマの全国大会では1試合110球、オーストラリアでは100球、上下関係が非常に厳しく、スパルタ的要素が残る韓国でも15~18歳では、ノーヒッターか完全試合の可能性が残されている場合を除いて、105球が限度。同様に4日間の休養が強制される。
 日本では、このような球数制限は部員数の少ないチームに不利に働くなど、不公平が生じるとの意見もある。ならば、米国を筆頭に同じく大多数の国が導入している7イニング制を実施すれば、かなりの部分で問題解決ができる。すぐにでも実行できて、高校野球全体を守る制度ではないか。
 巨大組織を運営する上で、日本の高校野球は感動を売りにした興行の側面もあるのは承知している。しかし、仕事として米、豪で7イニング制の国内大会を視察していた私でさえ、数多くの場面で感動したものだ。
 過酷な夏へ向けた日程の問題もある。現状は虐待ともとれる過密日程である。
 地方大会は沖縄のように土日開催として、開始を早めたらどうだろうか。球場確保の問題が生じた場合でも、今は立派な野球専用グラウンドを有する学校も少なからずある。授業を欠席することもなく、それこそ高野連の旗印である教育の一環にのっとったものである。
 甲子園での大会は前半と後半に分けて、その間に1週間ほど阪神タイガースへ戻すのも案ではないか。少年野球人口の激減を憂いているなら、その頂点に立つ高野連が野球先進国の好例を見習い、子供のことを真摯(しんし)に思いやる迅速な改善が必要ではないか。

関連キーワード

PR情報

購読試読のご案内

プロ野球はもとより、メジャーリーグ、サッカー、格闘技のほかF1をはじめとするモータースポーツ情報がとくに充実。
芸能情報や社会面ニュースにも定評あり。

中スポ
東京中日スポーツ