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【富山】拠点統廃合 心は離れ 合併後の一体感醸成

2021年4月10日 05時00分 (4月10日 09時57分更新)
柵でふさがれた常虹の滝へと続く遊歩道。崩れた土砂や倒木が手付かずのままとなっている=富山市猪谷で

柵でふさがれた常虹の滝へと続く遊歩道。崩れた土砂や倒木が手付かずのままとなっている=富山市猪谷で

 崩れた土砂や倒木が、歩行者の行く手をふさぐ。富山市猪谷の「常虹(とこにじ)の滝」は数年前まで、五本の滝が見物できる観光スポットだった。夏場には、地元の食堂が振る舞う流しそうめんを求め、地元住民や観光客が列を作っていた。
 だが二〇一四年、大雨で遊歩道ののり面が崩落。住民たちは市に復旧を求めたが、「予算は出せない」との回答だった。今も市の散策ガイドに掲載されているが、現場はほとんど手つかずのままだ。
 〇五年に合併した富山市。旧細入村にある滝周辺の住民たちは昨年三月、「常虹の滝を守る会」を結成し、遊歩道の整備を独自に進めることにした。同会の七十代男性は「合併しなければ、こんな状況にはならなかったのでは」といぶかしむ。
 合併前の〇二年に旧市の市長に就き、新市の初代リーダーともなった森雅志氏は、中心市街地や鉄軌道沿線へ人口を集約する「コンパクトシティ政策」を推進。中心部の再開発や路面電車の整備などを展開した。
 森氏は、こうした中心部に手厚い予算配分について「平準的な予算の使い方では、全体が地盤沈下する」と説明。中心部への集中投資で増えた固定資産税などの税収を周辺部へ還元するとしており、水橋や大沢野、大山地域への交流施設の建設などを予定している。
 だが、旧町村部の市民からは不満の声も上がる。合併後の旧六町村役場に設置した総合行政センターは、一六年に機能が縮小され、旧細入村の七十代男性は「窓口業務のみで、要望は市に直接言ってくれと言われる。住民の声が届かなくなった」と漏らす。
 地域住民の活動拠点となる文化会館や体育館など公共施設も、旧町村部を中心に統廃合が進む。
 旧大山町の大山文化会館は、稼働率の減少と老朽化を理由に、一九年三月末で廃止された。これを受け、地元の「合唱団おおやま」は、活動の場を会館から約十五キロ北西にある旧富山市のホールなどへ移転。団名を「合唱団OEKとやま」に変え、団員を地域に限定しないことにした。仲間は増えたが、発表を見に来る地元住民は減り、団の創設時から所属する七十代男性は「地域の人に見てほしかったのに」とさみしがる。
 市によると、市内の公共建築物の延べ床面積は一八年で市民一人平均四・〇平方メートル。富山市など中核市の平均三・二平方メートルより多く、スリム化の余地はあるとみる。老朽化などに伴い、今後四十年で必要な改修や更新費用は約三千二百億円不足する見通しで、市は施設の再編を進める方針だ。
 今後、高齢化による医療費などの財政負担は重くなり、行政運営の効率化は不可欠だ。一方で各地域に残る多様な文化やコミュニティーを守ることも重要。相反する懸案にどう対応するか、県都の新リーダーには難しい課題が託されている。(この企画は山岸弓華、長森謙介が担当しました)

【メモ】富山市の市町村合併=2001年、旧富山市など富山県中東部の11市町村で合併の検討を開始した。協議では滑川市と上市町、立山町、舟橋村が離脱。05年4月に富山市と大沢野町、大山町、八尾町、婦中町、山田村、細入村の7市町村が対等合併した。新市の面積は1242平方キロメートルで、県庁所在地では静岡市に次いで2番目に大きい。人口は旧富山市が約32万人だったが新市となって約41万人(今年3月末)となった。少子高齢化の中、合併しなければ中核市(当時30万人以上)を将来的に維持できない可能性があった。


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