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【富山】利用増も車依存残る 公共交通 路面電車の推進

2021年4月9日 05時00分 (4月9日 09時55分更新)
今年3月に開業した新停留所から発進する低床の次世代型路面電車(LRT)=8日、富山市牛島町で

今年3月に開業した新停留所から発進する低床の次世代型路面電車(LRT)=8日、富山市牛島町で

 富山駅の高架下から出てきた次世代型路面電車(LRT)が、わずか約百メートル北の真新しい停留所に止まった。観光客らでにぎわう富岩運河環水公園の最寄り駅だ。駅の南北を走る路面電車が直通運行された「南北接続」から一年たった三月二十一日に新設された。
 埼玉県から訪れた会社員福井翔さん(26)は富山城の見物後、LRTに乗ってこの駅で下車した。「床が低くて乗り降りも楽。気軽に使えて便利だ」。公園の散策後、再び乗車して港町の岩瀬浜へ向かった。
 「コンパクトなまちづくりの一つの到達点」。森雅志市長は、退任前の最後となる市議会の三月定例会で、南北接続の意義をこう強調した。二〇〇二年に就任した森氏が市政運営に本格導入した「コンパクトシティ政策」。そのけん引役と位置付けてきたのが、公共交通の整備だ。
 〇六年、JR富山港線を市が受け継ぎ、LRTを全国で初めて導入。増便や駅の増設により利便性を高めた。〇九年には、駅南側を走る市内電車を環状線化して中心市街地を回遊しやすくした。
 北陸新幹線の開業効果も追い風となり、利用者は着実に増加。駅南北の路面電車を足した乗車人数は、〇六年に一日平均約一万五千五百人だったが、一九年は約二万五百人に。二〇年はコロナ禍で落ち込むが、生活の足として根付いた。
 市内電車の沿線に住む男性(77)は、視力が落ちてきた六十五歳の時に免許を返納。「もう運転は怖い。車がなくてもまったく不便は感じない」と話し、路面電車で週二、三日は中心市街地へ繰り出している。
 ただ、こうした恩恵は、鉄軌道沿線の住民に限られている。〇五年の合併前の旧町村などの中山間地域では公共交通の利便性は低く、駅やバス停が徒歩圏にない空白地域も残る。旧婦中町の男性(74)は「足腰が弱ってきているから、バス停まで歩けないし、本数も少なく不便。車がないと生活できない」と語る。
 一九年の市民意識調査によると、八割以上の市民が普段の移動手段は車と回答。公共交通の利用状況は、七割以上が「ほとんど利用しない」「年に数回利用する」と答えた。
 環状線の駅に隣接した商業施設「総曲輪フェリオ」は休日、大型駐車場の前に長い車列が伸びる。車で来た五十代の男性は、自宅近くに市内電車の駅があるが「車の方が断然楽だし、あえて電車に乗る理由が見つからない」と話す。
 この二十年間で、市内外の郊外には大型ショッピングセンターやアウトレットモールが相次いで開業し、市民の多くは車依存の生活を続けている。高齢化による交通弱者の増加は進み、鉄道やバス会社の経営もコロナ禍で厳しい状況にある。南北接続で一段落した市の交通政策は、次の方向性を打ち出す必要がある。

【メモ】富山市の公共交通整備=2006年に開業した「富山ライトレール」は、北陸新幹線開業を受けて廃線が検討されていたJR富山港線を市が路面電車化した。事業費約58億円(市約27億円、県・国約31億円)。09年には富山地方鉄道の市内電車の2系統の間に約1キロの軌道を新設して環状線化。事業は市が整備と車両購入、富山地鉄が運行を担う上下分離方式を国内で初めて取り入れた。事業費約30億円(市約17億円、国約13億円)。20年の路面電車の南北接続は事業費約40億円(市約23億円、国約17億円)。


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