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「地理」の必修化 防災の実践力を育む

2021年4月8日 05時00分 (4月8日 05時01分更新)
 高校の授業に来春から「地理」が必修化される。ほぼ半世紀ぶりの復活だ。国内外で相次ぐ大規模災害や南海トラフ巨大地震に備え、一人一人の防災意識や、その実践力を高める狙いがある。
 「地理総合」は二〇二二年度から「情報1(ローマ数字の1)」や「公共」「歴史総合」と並び、高校の授業で必修化され、いまの中学校三年生が主対象となる二五年の大学入学共通テストから入試科目になる。
 地理情報システム(GIS)やハザードマップ、地形図の読み取り方をはじめ、防災教育を柱に、都市や交通問題、国際社会における日本の位置付けなども学ぶ。地名や特産品など「暗記科目」の印象が強かった地理だが、がらりと変わる。自分がどんな街に暮らし、災害時にどう対応するべきかを具体的に考えるなど、新学習指導要領が掲げる「生きる力 学びの、その先へ」を象徴する実践的な科目になりそうだ。
 大学入試センターが三月下旬に公表した地理総合のサンプル問題は、過去に起きた水害のデータやグラフから、今後想定される災害や減災、避難、復興のあり方を答えさせる設問だった。
 東日本大震災や熊本豪雨など激甚化する一途の災害に、国民一人一人がどう備えるか。自分の命を自分で守る姿勢がいっそう求められるなか、防災教育の充実は時代に即していると言えよう。
 とはいえ、地理の必修化は一九七二年度以来だ。日本史や世界史との選択制になって以降、入試科目に地理を設定しない大学が続出し、授業で地理を学ぶ生徒も減った。地理を専門とする教員の絶対的な不足が危惧される。日本地理学会によると、例えば都内の「地理歴史」教員のうち、地理を専門とする人は二割にとどまる。
 学校によっては専門的に学んでいない教員が教壇に立つ場面も出てこよう。地理学会は教育現場に対し、地図を携えて実際に歩きながら地域調査の視点や方法を学んだり、GISの活用技術を向上させるなど、必修となる二二年度に向け、教員研修の強化を提言している。教材の提供や講師の派遣など後方支援も期待される。
 授業では、地図やハザードマップなど公開データを駆使することになる。国の予算が削られ、国土地理院の地形図など国土情報の更新が遅れがちだと日本学術会議はかねて指摘している。地方自治体やNPOなどからの情報を含め、最新のデータで学び、考えてこそ、より実践的な力は身に付く。

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