イタセンパラ 繁殖確認 試験放流の氷見・矢田部川
2021年4月8日 05時00分 (4月8日 10時53分更新)
文化庁に市教委報告「野生復帰できる環境」
氷見市教委は、国天然記念物で絶滅危惧種の淡水魚イタセンパラの保護増殖調査結果を文化庁に報告した。野生復帰環境調査では、試験放流した矢田部川で生まれた個体から、さらに繁殖する過程が観察され、「野生復帰できる環境がある」と結論づけた。 (小畑一成)
イタセンパラは市内では万尾川に生息し、ほかは仏生寺川水系にわずかに見られるだけ。一河川だけでは災害発生など環境変化があれば危機に陥り、また遺伝子の多様性を確保するためにも生息地を広げることが重要だった。
市教委は、かつてイタセンパラが生息していた仏生寺川水系の矢田部川が、卵を産み付ける二枚貝や同じ仲間のタナゴが多いことに着目。二〇一九年八月に雄四十匹、雌六十匹を試験放流した。二〇年一月、採取したイシガイ二百十八個のうち四個で産卵を確認した。
同年五月に稚魚、七月に幼魚を観察し、九〜十月の産卵期に雄十六匹、雌十一匹が見つかり、雌二匹から卵を確認した。市教委の西尾正輝主任学芸員は「矢田部川が、イタセンパラの繁殖できる環境にあることが確認された」と話す。今年五月にも観察する予定で、保護増殖に役立てる。
イタセンパラの生息にはさまざまな生物がかかわり「多様性の象徴」といわれる。しかし、河川環境の悪化や外来魚による食害で激減し、岐阜県の木曽川では環境省などが試験放流している。
【メモ】イタセンパラ=富山県のほか、愛知、岐阜両県の濃尾平野や琵琶湖淀川水系の限られた地域に生息する日本固有種の淡水魚。タナゴの仲間で、体長5、6センチ。川岸の流れの少ない水域に生息し、秋にイシガイなど二枚貝の中に産卵する。稚魚は冬の間を貝の中で過ごす。密漁や外来種などの影響で激減し、絶滅危惧種と国の天然記念物に指定されている。
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