伝統工芸タッグ 白山の笠ぶた 浅野太鼓がヒノキ細工道具
2021年4月7日 05時00分 (4月7日 05時03分更新)
白山市福留町の老舗太鼓店「浅野太鼓楽器店」が、県の伝統工芸「ヒノキ細工」づくりに欠かせない木型「笠(かさ)ぶた」を完成させた。太鼓、ヒノキ細工はともに、昨年十一月に設立された「白山市伝統産業振興協会」に加わっており、ヒノキ細工を継承する香月(かつき)久代さん(71)=同市深瀬新町=が同店に作製を依頼していた。市内に根付く伝統工芸の“タッグ”は、地域の伝統産業を共に盛り上げるモデルケースと言えそうだ。 (吉田拓海)
ヒノキ細工は、ヒノキを薄く帯状にした「ヒンナ」と呼ばれる素材を折り込んで「檜笠(ひのきがさ)」などを作る伝統工芸で、軽くて通気性の良いのが特徴。約四十年前に手取川ダムに沈んだ同市の旧深瀬集落で作られており、香月さんも旧深瀬集落の生まれだ。
浅野太鼓楽器店が手掛けた笠ぶたは、裏返したおわんのような形状で直径約四十七センチ、重さ約二キロ。檜笠作りでは、笠ぶたの上にヒンナを置いて折り込んでいく。一つの笠ぶたで渓流釣り用、林業用とつばの大きさが異なる二種類の笠を作ることができる。
今回の笠ぶたには、軽くて腐りにくいクスノキを使用した。香月さんによると、笠ぶたの形が檜笠の仕上がりに強く影響するため、精度が高い加工が欠かせない。太鼓作りで培った高い技術力が生かされ、表面は滑らかな仕上がりとなっている。完成品を受け取った香月さんは「立派すぎて恐れ多いほど。負けないくらい頑張らなければ」と語った。
同伝統産業振興協会の理事長も務める浅野太鼓楽器店の浅野昭利さん(74)は「こうした依頼があることは予想外だったが、伝統産業同士、協力できてうれしい」と話していた。
今後は、香月さんが主宰するヒノキ細工教室などで活用していく予定だ。
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