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盲目のピアニスト香介が抱くパラリンピックへの思い

2021年4月6日 10時46分

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盲導犬育成支援のチャリティーライブで演奏する香介(左から2人目)=東京・中野新橋「フォーク酒場ゆらゆら」で

盲導犬育成支援のチャリティーライブで演奏する香介(左から2人目)=東京・中野新橋「フォーク酒場ゆらゆら」で

 香介という盲目のミュージシャンがいます。今年のパラリンピックを東京で開催できるかどうか分からない。でも歌い続けることで選手たちを応援したい。そのような思いを抱きながらピアノに向かい、シャウトする36歳のロックンローラーです。
 4月の日曜日の午後、そんな香介が主催するチャリティーライブを訪ねました。かつては花街だった東京・中野新橋の駅横にひっそりとたたずむフォーク酒場。新型コロナウイルス対策のためいくつもの透明シールド板に囲まれたステージで、香介はいつものようにパラリンピックへの思いを観客を前に語っていました。
 「これから演奏するアナザースターという曲は車いす競技をテーマにしていて、ユーチューブでも公開しています。歌詞にある『輝くルーレット』は車いすの車輪を指していて、回転を始めれば誰が1番になるか分からないという意味。どんな人にも輝く個性があるという思いを込めて作りました」
 車輪が静かに回り始めるようなピアノの旋律から始まる曲を、このように紹介。彼にはその他にもパラリンピック応援3部作と自ら名付ける「永遠の扉」「ブルーバード」の代表曲があります。
 香介がパラリンピックに強い興味を抱くようになったのは、滋賀県立盲学校の後輩である競泳の木村敬一選手(30)が台頭してきたころからでした。2008年北京大会から3大会連続でパラリンピックに出場して銀と銅のメダルを3個ずつ獲得し、東京大会では金メダルの筆頭候補です。
 そんな木村選手と盲学校の宿舎で生活をともにした日々を「僕がピアノを練習していると、横で遊んでいる敬一のボールがよく飛んできた」と振り返る香介は、自分ができることでパラアスリートたちを支え、応援しようという思いを固めていきました。
 この日のコンサートは、盲導犬育成支援のチャリティーが目的。今年で5年目を迎え、通算27回目。毎回500円ずつを観客一人一人から集め、アイメイト協会に寄付しています。
 その活動に賛同する仲間も増え、今回は名古屋出身で大のドラゴンズファンでもあるドラマーの中村皓(こう)さんがパーカッションで参加。サックスのアダチさん、ボーカルのアオイさんによる女性ユニット「東京檸檬(れもん)Cigarette」も、音楽だけではなく手作り料理でもお客さんをもてなしました。人と人がつながり、支え、支えられていく。そのようなうねりを作り出すことができるのも、音楽やスポーツの魅力です。
 「パラリンピックが今年できるかは分からない。選手たちはどのような思いで今を過ごしているのだろうと思う。でも中止や延期になってもパラスポーツはこれからも続き、それが障がい者にとっても暮らしやすい社会につながっていく。そのことは忘れないようにしないと」
 緑内障のため8歳で視力を失った香介が障がい者に生きる力を与え、新たな「アナザースター」を生み出していく旅は、これからも続きます。
 ◆ヘンリー鈴木(鈴木遍理) 東京中日スポーツ報道部長、東京新聞運動部長、同論説委員などを経て現東京中日スポーツ編集委員。これまで中日ドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズ、大リーグ、名古屋グランパス、ゴルフ、五輪などを担当。
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