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データ分析 河村さんはなぜ強いのか

2021年4月7日 18時50分 (4月22日 18時07分更新)
 2009年以来4度の市長選で勝利を収めてきた名古屋市の河村たかし市長。議会などとの対立を煽る劇場型の市政運営は時に混迷をもたらしたとの批判もあるが、選挙となればめっぽう強い。森正・愛知学院大教授によれば、有権者が投票を決める3つのポイントは「政党支持別の投票行動、争点、業績評価。争点が影響力を持つのは、身近で対立軸が明確であること」。この3つに照らし、過去の開票結果や中日新聞社の出口調査などのデータと合わせて振り返ってみよう。

◆政党の枠にとらわれない人気

 河村氏の得票率は、初当選した2009年は58.57%だったが、市議会の解散を問う住民投票、知事選との「トリプル選」になった11年(69.81%)、13年(62.20%)、17年(67.84%)の3回はいずれも6割を超えた。性別や年代を問わない幅広い層から支持を得ており、特徴的なのは政党の枠を超えた個人人気に支えられている点だ。

 出口調査の結果から政党支持別の投票先をみてみると、11年の出直し市長選以降3回は、自民、旧民主・民進などの市議らが河村氏の対抗馬を支援。だが、3回とも支持層の5~7割が河村氏に流れた。支持政党が推す候補に投票しない、いわゆる「逸脱投票」だ。首長選は国政選挙と違い、個人対個人の様相が強い。さらに衆院議員時代から「総理を狙う男」として抜群の知名度を誇る河村氏の出馬によって、その傾向が強くなったと思われる。

 一方、大差で敗れる市長選が続くなかで、主要政党も弱腰になった面は否めない。不戦敗を免れるために藤沢忠将市議(自民)を立てた13年は、自民、民主ともに県組織の推薦や支持にとどまった。17年の市長選では、対抗馬の岩城正光元副市長の支援はさらに一段低い市議レベルでしかなかった。「河村VS議会」という構図が際立てば、市民から改革の抵抗勢力と映るのを恐れたとみられる。
 元市議会議長の横井利明氏が出馬する今回は、一致して「河村降ろし」に臨んでいる。横井氏には、所属していた自民に加え、旧民主系の立憲民主、国民民主も党本部推薦を決定。過去2回の選挙は態度を明らかにせずに一部市議の支援だけだった公明も、今回は党本部推薦を出した。共産党も自主的支援を決め、国政与野党が「河村降ろし」で包囲網を組んだ形だ。市議会の議席勢力で言えば、包囲網と河村氏率いる減税日本は「53対13」と圧倒的。ただ、それも政党支持通りに投票すれば、である。

◆争点なき戦い

 河村氏が市長選に初当選した2009年は、戦う前から結果が見えていた主要政党による「相乗り」が28年ぶりに崩れ、有権者に選択する機会が与えられた。ガチンコ対決による投票率は50.54%で、1977年以来32年ぶりに50%を超えた。市議会の解散を問う住民投票、知事選との「トリプル選」になった2011年は54.14%と伸びた。
 河村氏が当初、「主権在民3部作」と呼んだ主要政策は市民税10%減税、地域委員会、議会改革。ただ、肝いり政策の市民税減税が5%で実現した後の2013年市長選の投票率は39.35%と11年を大きく下回り、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて初の17年は、36.90%に落ち込んだ。有力対抗馬の不在で当初から河村氏の優勢が伝えられ、しらけムードが影響したとみられる。
 13年と17年の市長選出口調査で「最も重視した政策」を尋ねると、いずれも減税政策がトップ。17年の選挙で河村氏が強く訴えた名古屋城天守閣の木造化は投票先を選ぶ決め手にはならなかった。3部作の地域委員会は頓挫し、議会改革も道半ば。11年のトリプル選で訴えた「中京都構想」も事実上立ち消えになった。その意味では、減税公約を達成して以降、有権者が身近に感じる新たな争点は提示されず、知名度争いとなってしまったとも言える。
 今回対抗馬として出馬する元市議会議長の横井利明氏は、減税政策について「新型コロナウイルスが収束するまで継続」と反対せず、市長給与は河村氏が続けてきた800万円よりさらに低い544万円を掲げた。河村氏の看板政策を打ち消す戦略だ。一方、河村氏は今回、常勤スクールカウンセラーの小学校配置や公立の小中高一貫校を新設するなどの教育施策の充実に力を入れている。

◆3期12年の総括

 2017年の市長選出口調査で、河村市政を「大いに評価する」「ある程度評価する」と答えたのは、合わせて77.3%。おおむね業績が支持されていた。「評価するか、評価しないかを決めたポイント」を尋ねると、減税政策がトップで、市長給与800万円と続いた。そのうち減税を選んだ人の77%、市長給与の84%が河村氏に投票した。


 「福祉やまちづくり」「教育・子育て」「名古屋城天守閣の木造化」を評価ポイントにした回答者の間では、投票先の河村氏と岩城氏の間に大きな開きは見られない。河村氏の強さはやはり、「減税」と「市長給与800万円」に頼っていると言えそうだ。新型コロナウイルス対策や大村秀章・愛知県知事へのリコール(解職請求)署名偽造問題など新たな評価ポイントが加わる今回。河村氏は「5期目は目指さない」と断言しており、有権者がそれぞれの切り口で河村市政3期12年を総括する最後の機会になりそうだ。
 市長選には他に、元会社員の太田敏光氏が出馬を表明している。
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