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<備える> 災とSeeing(1)清洲越し 「事前復興」家康の先見

2021年4月5日 05時00分 (4月5日 11時03分更新)

清洲城の木材を使って建てられたと伝わる名古屋城の西北隅櫓(後方)について話す福和伸夫さん=名古屋市中区で

 江戸時代初めに、徳川家康が尾張・清洲の城下町を名古屋に丸ごと移した「清洲越し」。その理由としては、低地に位置し、水害への不安があったとされる。加えて一帯は軟弱な地盤で、大地震に伴って液状化現象が起きた痕跡も見つかっている。「清洲越しは、地盤が強固な高台への移転。今で言う『事前復興』だった」と指摘するのは、名古屋大減災連携研究センターの福和伸夫教授。現地をともに歩き、「家康の一大プロジェクト」を防災の観点からひもといてもらった。 (梅田歳晴)
 最初に訪れたのは、戦国時代に清洲城を居城としていた織田信長と正室・濃姫の銅像が立つ清洲公園(愛知県清須市)。五条川をはさみ、対岸には一九八九年に再建された清洲城の「天主閣」が見える。
 「清洲の『洲』の字から分かるように、部首のさんずいも『州』も両方とも水にまつわる。この辺りは、非常に地盤が軟らかく、液状化が起きやすい場所です」と福和教授は説明する。

再建された清洲城の天主閣=愛知県清須市で

 清洲の町は、五条川や近くの庄内川の氾濫により、幾度となく水害に見舞われた。二〇〇〇年の東海豪雨では、近くの新川が決壊したほか、庄内川や五条川でも堤防を越えて水があふれた。
 戦国末期の一五八六年に起きた天正地震では、この辺りで液状化現象が発生した。この時の液状化の痕跡を示す地層は切り出され、名古屋大減災館(名古屋市千種区)で「剥ぎとり展示」として公開されている。

天正地震で起きた液状化現象の痕跡を示す「剥ぎとり展示」=名古屋大減災館で

 清洲越しは一六一〇年に始まり、築城関係者や武士、町人、商家、質屋まで約六万人と約百の寺社、六十七の町が名古屋へと移された。
 一八九一年十月には、日本最大級の内陸活断層型地震の濃尾地震(M8・0)が発生。岐阜県本巣市を震源とし、死者七千人以上、全半壊した家屋は約二十二万戸に達した。清洲の町でも大きな被害が出た。清洲公園の線路を挟んで北側にある清洲古城跡公園内には「大地震紀年碑」があり、地震による地区の死者の名が刻まれている。

濃尾地震の「大地震紀念碑」=愛知県清須市の清洲古城跡公園で

 清洲古城跡公園を後にし、名古屋城へ。
 一六一二年に天守閣が完成した名古屋城は本丸、御深井(おふけ)丸、西之丸、二之丸、三之丸からなる。御深井丸の北西隅にある「西北隅櫓(すみやぐら)」は、戦争の焼失を免れ、築城当時の姿を今にとどめる。三重三層の造りで国の重要文化財に指定されている。清洲城の「天守または小天守を移築したもの」と伝えられており、「清洲櫓」とも呼ばれる。
 名古屋城がある場所は、周囲より小高い「熱田台地」の北端。福和教授は「今名古屋城があるこの辺りは、大阪方面からの守りとしても、地盤的にも最高の場所だったのでしょう」と話す。

清洲城の木材を使って建てられたと伝わる名古屋城の西北隅櫓(後方)について話す福和伸夫さん=名古屋市中区で

 東日本大震災を機に「事前復興」という考え方が注目されるようになった。大災害の発生をあらかじめ想定し、被害の最小化につながるまちづくりを推進することで、土地の利用の仕方を見直し、津波の襲来が予想されたり、軟弱な地盤だったりする場所からの移転なども含まれる。発生が懸念される南海トラフ地震などを見据え、国は「事前復興計画」の策定を自治体に呼び掛けるが、具体化する動きは鈍い。
 名古屋城は清洲越し以降、宝永地震(一七〇七年)、安政東海地震(一八五四年)、濃尾地震などの大地震に見舞われた。しかし、その際の被害は、石垣や土塀、櫓の一部にとどまっている。
 福和教授は「今、事前復興計画が必要と言っても、なかなか進まない。一方で、昔は町全体を丸ごと移すことをやっていた。私たちはもう一度、過去に学ばないといけない」と力を込めた。

 天正地震 1586(天正13)年に東海、北陸、近畿地方を襲った内陸活断層地震。規模はマグニチュード(M)8前後とみられる。文部科学省地震調査研究推進本部によると、飛騨で大山崩れがあり、帰雲(かえりくも)城が埋没して城主以下多数が圧死したほか、尾張や大垣、長浜、京都などでも被害が生じた。養老−桑名−四日市断層帯・阿寺断層帯・庄川断層帯が連動して起きた可能性も指摘されているが、こうした断層帯と地震の関係を断定する資料がなく、不明な点が多い。

CBCテレビによる動画


アクセス

 清洲古城跡公園 JR清洲駅、名鉄新清洲駅から徒歩約15分。近くの清洲公園に立つ信長の銅像は、「桶狭間の戦い」に出陣する姿を模している。五条川を挟んだ対岸の清洲城天主閣の開館時間は午前9時〜午後4時半。大人300円、小中学生150円。幼児無料。
 名古屋城 地下鉄名城線市役所駅7番出口から徒歩5分。市バスは栄13号系統名古屋城正面前下車すぐ。なごや観光ルートバス「メーグル」は名古屋城下車すぐ。開園時間は午前9時〜午後4時30分で、本丸御殿の入場は午後4時まで。観覧料は大人500円、名古屋市内高齢者100円、中学生以下無料。
 名古屋大減災館 東山キャンパス内にある。地下鉄名城線名古屋大学駅下車すぐ。コロナ禍で臨時休館中だが、8日以降は仮予約で見学受け付け中。完全予約制で見学人数を絞る。開館時間は午後1〜4時。料金無料。午後1、午後2、午後3時の3部制で各回定員は10人。来館月の3カ月前から3日前まで予約可能。予約受け付け後、スタッフからのメール連絡をもって予約確定となる。休館日は日・月・火曜、最終土曜、祝日など。(問)052(789)3468

<観光目線取り入れ新シリーズ始めます>

 過去に起きた災害を今に伝える史跡などを巡り、観光目線を取り入れながら学び、将来への備えにつなげたい−。そんな思いから、これまで随時掲載してきた「歴史に学ぶ」をリニューアルする形で、新しいシリーズ企画を始めます。名古屋大減災連携研究センター、CBCテレビ、中部地域づくり協会地域づくり技術研究所と協力して取り組みます。

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