<食卓ものがたり> タラの芽(群馬県東吾妻町)
2021年4月3日 05時00分 (4月3日 05時00分更新)
「猫の手の形」と生産者が表現する黄緑色の葉先が、水を張ったコンテナいっぱいに並ぶ。ビニールハウスでは、長さ五〜十センチに切ったタラノキの幹から、七センチほどのタラの芽が空に手を伸ばすかのように育ち、収穫の時を迎えていた。
タラの芽の生産量が全国二位の群馬県。県北西部の中山間地に位置するJAあがつま管内には二十五軒の生産農家がある。小宮農園(東吾妻町)は昨年、管内生産量約四万八千パック(約二千四百キロ)の四分の一を担う地域の中心的存在だ。
経営する小宮拓也さん(53)は二〇一〇年、赤字だったシイタケの代替作物としてタラの芽に着目。「山菜は人気で単価も高く、水耕栽培で収穫量も計算しやすい。年を重ねていく両親が冬から春にかけ、暖かいハウスで作業できることも理由の一つ」と、県が開発した新品種「ぐんま春王(はるおう)」の栽培に挑戦した。
小宮さんは地域で先陣を切って栽培に挑戦したが、最初の一一年は散々の出来。「二・五メートルほどに育つはずの木が一メートルにも満たず、収穫できなかった」。苗の育て方、木を植える間隔、保温の仕方、肥料のやり方など試行錯誤を重ね、六年後には、「ホウレンソウや初期投資が...
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