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喉頭内視鏡の小型化で馬の世界に起きた『劇的な変化』素質ある馬が『勝てない原因』特定できることも

2021年4月2日 06時00分

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馬の頭部に装着された小型内視鏡。馬は装着したまま追い切り、全力疾走時の喉頭部の様子を観察。ノド鳴りの詳細な病態が判明した

馬の頭部に装着された小型内視鏡。馬は装着したまま追い切り、全力疾走時の喉頭部の様子を観察。ノド鳴りの詳細な病態が判明した

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 機械の小型化は、技術の進歩を身近に感じることのできる現象の代表選手だろう。いまやスマホには、高性能カメラが搭載されていて、エクセルも動く。
 循環器研究の世界では、心電図を長期間記録するのに「ホルター心電図」という機械を使っていた。心臓の働きを電気的に記録するため電極を継続的に設置する。データ保存用記録媒体のサイズがネックで、ヒト用ではかつてバックパックに入れていた。それがショルダーバッグを経てウエストポーチになり、いまや簡易的なものでは腕時計の中のアプリになった。
 馬の世界では心電図のほか喉頭内視鏡が小型化によって劇的な進歩を遂げた。いわゆる喉鳴りを診断するツールだ。喉鳴りにはさまざまなパターンがある。声帯が開いてほしいタイミングで開かなかったり(喉頭片まひ)、喉頭蓋(がい)が裏返ったり(喉頭蓋エントラップメント)、軟口蓋が背側にずれて気道を狭くしたり(DDSP)。それぞれの病態で対処法が違う。少なくない症例で走らせた状態でないと何がどれくらい問題になっているのか判別しづらいことが多い。
 機械が大きいと馬が止まった状態でないと喉頭部を観察できないため、トレッドミルで走らせて観察するなどの工夫がされてきた。それが、つけたまま走らせられるほどの内視鏡の小型化は、この分野の世界観をがらっと変えた。
 写真は3月初めの栗東で撮影。夏のデビュー当初から馬っぷりと腰のバネが素晴らしく、勝ち上がり順番待ちと目されていた3歳牝馬が装着していた。大敗続きの原因がこれで判明。管理調教師に聞けば「喉頭部に奇形が見つかった」とのこと。ほどなく抹消となったのは残念だが、内視鏡の小型化がなければ原因が特定できないまま走り続け、結果が出ないまま苦しい思いを重ねるだけだったろう。馬っぷりのよい馬が、走らなかった原因を特定できたことで次世代への期待はつなげることができる。技術の進歩が、馬の福祉を向上させられるという、地味ながらも得難い一例だと思う。

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