突然の引退で思うこと せめて場所前に決断すべき 鶴竜ファンだけが大相撲を支えているのではない【北の富士コラム】
2021年3月31日 06時00分
◇改めて「照ノ富士関、優勝おめでとう」
千秋楽は時間がなくて「おめでとう」を言っていなかったので、改めて「照ノ富士関、優勝おめでとう」。よし! これでスッキリした。
春場所の優勝、一番手は白鵬で、次いで照ノ富士。3大関の優勝は絶対になし。もし続くとしたら、高安と予想したと思います。
よもや忘れたとは言わせません。どうですか? この見事な予想は。だてに23年、解説者をやっていません。寸分の違いもありません。舞の海君には申し訳ないけど、私の域に達するには、あと少なくとも5年はかかるでしょう。と言うのはいつもの冗談です。あまり気にしないでもらいたい。
今場所の照ノ富士は、前半戦に強引な投げを打っていましたが、後半は前に出る相撲で、全く危なげを感じさせませんでした。後で分かったことですが、両膝が相当に悪かったようです。これが逆に幸いしたようで、取り口ががらりと変わった。
いずれにしても、3大関をはじめとして、今は他の力士達の追随を許しません。怖いのは、けがだけです。私はこの勢いは止まらないと思っています。よほどのことがない限り、脚が無事で取れたら12~13番はできるでしょう。
他に誰がいますか? いるとしたら白鵬のみです。その白鵬の出場は、名古屋場所に決まったようです。夏、名古屋と連覇すると当然、横綱昇進となるでしょう。そうはうまくいくものかと言う人もいますが、ここは一気に行くところです。まさに千載一遇のチャンス。白鵬が息を吹き返したら、チャンスを逃します。時間がかかります。
千代の富士もそうでした。初優勝しても、まぐれのように扱われ、まさか横綱になると思ってもいなかったのに、アッという間に昇進したのです。今の勢いを逃してはいけません。
今は照ノ富士を脅かす相手はいません。期待の3大関も10勝がいいところ。その間に1人は欠けるでしょう。誰とは言いませんが、3人ともにその危険性は持っているといっていいでしょう。3大関はとにかく稽古不足。どなたに聞いても照ノ富士の半分も稽古をしていません。という訳で今が絶好のチャンスであります。
31日は再度の使者を迎えます。新聞にはすでに、気持ちは綱を見ているように書かれていました。きっと夢はかなうでしょう。
それでは、紙面が少し残っているので、両横綱について少し思うことを書いてみます。鶴竜の場所中、突然の引退発表には驚きましたが、だんだんと謎が解けてきました。おそらく横審から引退勧告される前に先手を打ったのでしょうが、私はあまり好きではありません。せめて場所前に決断するべきだったと思います。
先代師匠が急死されたので、相談する人も不在だったのかもしれません。35歳まで綱を張ったのは立派と言えないことはないが、20場所も休場はあまりにも多すぎである。その都度、ファンのためにもう一度と言い続け、土俵に上がった気持ちは分からなくもないが、鶴竜ファンだけが大相撲を支えているのではないのです。
栃錦は優勝した翌場所、2連敗すると静かに引退。親友の出羽錦が突然の引退を知らされる電話の受話器を握ったまま、泣いていた場面は今、思い出しても泣けてくる。佐田の山は高見山に負けると「横綱として恥ずかしい」とばかりに引退してしまった。
私事で恐縮だが、私も7場所休場しているが、3場所連続全休はなかったと思う。「何とか泥棒」とか「早く引退しろ」など、痛烈なヤジが飛んできても、3場所続けて休む勇気はなかったものだ。
大鵬、北の湖、貴乃花の一代年寄ぐらいになると、5場所連休はあるが、鶴竜クラスは本来ならとても許されるとは思えない。例外では、稀勢の里もいるが、久しぶりの日本人横綱と言うことで、さほどの非難はなかったが。
引退の記者会見で晴れ晴れとした笑顔で「楽になった」と語っているが、横綱の苦労は、なった者にしかわからないのである。栃錦のように「桜の花のように」とは行かないが、遠い異国でよく頑張りました。ご苦労さまでした。東京では今、桜が満開だ。ちらちら散っている花もある。残る桜もいずれは散る。
今度は白鵬の番である。余話として「咲いた桜に、なぜ駒つなぐ、駒が勇めば、花が散る」。意味深だな。一体どなたが駒をつなぐのだろうか。名古屋、7月場所はもうすぐであります。(元横綱)
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