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仲間と学びて醸す青春

2021年3月28日 05時00分 (3月30日 12時25分更新)

◇大学生「日本酒サークル」人気

 若い世代で酒を飲む人が減っている中、全国の大学で「日本酒サークル」が増えている。と言っても、お酒を飲みまくるいわゆる「飲みサー」にあらず。基本的に入会資格は20歳以上。歴史や製法を学び、お気に入りの味わいを追求し、仲間とともに日本酒愛をかもす。なぜ、今、学生たちは日本酒に注目しているのか。(堀井聡子)

▽おしゃれラベル、アルハラ減 親しみやすく
▽コロナ禍 全国リモート飲み会も

 サークルの活動内容は大学でさまざまだが、主にメンバー同士の試飲会や酒造見学などをしている。サークルなどの代表者でつくる「全日本学生日本酒連盟」が把握する限りでは、二〇一八年に全国で七団体あったのが、二〇年は十九団体と三倍近くに増えた。
 連盟は二〇年三月に発足したばかり。ツイッターなど会員制交流サイト(SNS)を通して東北から九州まで十九団体がつながる。大人数で集まりにくいコロナ禍だからこそ、オンラインで意見交換会や飲み会を開くきっかけとなった。
 連盟代表で東京農業大四年の豊田千木良(ちぎら)さん(24)は「さまざまな味わいの日本酒が増えたりおしゃれなラベルが増えたりして、ここ数年日本酒に興味を持つ学生が増えてきた」と言う。また、飲酒を強要するなどの「アルコールハラスメント(アルハラ)」が減ったことで、じっくり酒をたしなむ環境もできてきた。
 過去にもたびたび日本酒サークルは発足していた。ただ、入会できる二十歳になるころには学生が既に他の部活やサークルに入っており、新メンバーが集まりにくいため、数年で解散するケースが多かった。
 にもかかわらずここ数年サークルが増えた理由として、豊田さんが挙げたのが「全国きき酒選手権大会」だ。全国の酒造組合などが加盟する「日本酒造組合中央会」(東京)の主催で、一三年から大学対抗の部が設けられた。「大会後の懇親会で学生同士のつながりができた」と話す。
 中央会では大会以外も、二十代向けの日本酒イベントを開催してきた。広報担当の郷古(ごうこ)純さんは「香りが華やかで飲みやすいタイプが若い人には人気。造り手も世代交代で三十〜四十代の若手が増え、オンラインで情報発信するようになった」と、蔵元側の変化も感じている。
 サークルをきっかけに酒造や業界団体に就職する学生も出てきた。豊田さんは「サークル同士で情報交換して、活動が継続できるよう横のつながりを持っていきたい」と話した。

**歴史、製法 味わい方 多様**
「能登杜氏と酒づくり」
◇石川・学生団体 Nプロジェクト

 石川県内の大学生による学生団体「N−project(Nプロジェクト)」、通称Nプロは、二〇一四年から老舗酒造「数馬酒造」(能登町)や農業生産法人「ゆめうらら」(志賀町)などと連携して日本酒造りをしている。「N」は日本酒・能登・農業の三つの頭文字から取った。
 活動の特徴は、米作りから日本酒の仕込み、商品企画まであらゆる工程に学生が携わっていること。そのため日本酒だけでなく、農業に興味がある学生の参加も多い。毎年味わいや仕込み方を変え、日本酒「Chikuha N」シリーズを造ってきた。
 中心メンバーは六人で、全員が石川県立大の学生。過去には金沢大や金沢美術工芸大の学生もいたが、昨年はコロナ禍の影響で、広くメンバー募集や酒造りができなかったという。
 代表の県立大一年山本陽菜(ひな)さん(19)は「今年はもっと活動したい。農業の視点から、高校生にも日本酒に興味を持ってもらえる活動などできれば」と意欲を語った。
◆代表 山本陽菜ひなさん(19)
 未成年なので、お酒が飲めるようになったら、やっぱり数馬酒造(石川県能登町)の「Chikuha N」を飲みたいです。

「利き酒全国大会へ鍛錬」
◇名古屋・名城大 日本酒研究会

 最も歴史ある日本酒サークルが、一九七九(昭和五十四)年に設立した名城大(名古屋市)の「日本酒研究会」。今年で四十二周年を迎えた。農学部を中心に一〜四年の五十四人が所属。昨年は農学部と共同で商品化した欧州市場向け日本酒「はなのしろ」を、国内で先行販売した。
 薫り高い純米大吟醸と、三年熟成させた純米古酒の二種類を開発した。それぞれの酒を擬人化したキャラクターをラベルに描き、日本のポップカルチャーもアピール。二〇一九年には研究会のメンバーらがフランスを訪れ、現地の人に商品の試飲会を開いた。
 普段の研究会では、先輩が製造工程について後輩に講義したり、「全国きき酒選手権大会」に向け利き酒の練習をしたりしている。未成年は飲めないので香りだけ。会長の三年山本未来(みらい)さん(21)は「昨年は酒造見学などできなかった。今年は何とかコロナ禍でもできる活動を考えたい」と話した。
◆会長 山本未来みらいさん(21)
 お気に入りの日本酒は関谷せきや酒造(愛知県設楽町)の「くう」です。二十歳の誕生祝いに人生で初めて飲んだ日本酒。格別の味でした。

「世代交代 知恵しぼり」
◇東京農大 酒仙会

 東京農業大の「酒仙(しゅせん)会」は、二〇一九年に発足。会長は、全日本学生日本酒連盟代表の豊田さん。酒仙とは「心から酒を楽しむ人」という意味で、飲むだけでなく酒造見学や酒造り体験をして日本酒への造詣を深めている。
 メンバーは約三十五人。東京農大には酒や発酵について学べる醸造科学科があるが、この学科以外の学生も多く所属している。二〇年十一月には未成年の学生を対象にした「酒仙会支部」を立ち上げた。こちらはメンバーの十五人全員が醸造科学科の学生だ。「お酒はまだ飲めないが、授業で日本酒に興味を持った学生たちが入ってくれた」と豊田さん。酒造見学の際はもちろん試飲は無し。二十歳になれば「酒仙会」に入ることができる。
 豊田さんは「活動が続いている団体は、未成年から参加できる仕組みのところが多い。支部によって、スムーズに代替わりできるようになれば」と期待している。
◆会長 豊田千木良ちぎらさん(24)
 お気に入りは剣菱酒造(神戸市)の「剣菱」。常温良し、熱かん良し。奥深くて落ち着く味わいです。

~ほりいの深ぼり~

 「初めは飲み会で飲まされて日本酒が苦手になったけど、先輩に教わりながら飲んだら大好きになった」「楽しそうに飲む先輩の姿を見てきたから、お酒にプラスなイメージがあった」−。取材した学生たちのこんな言葉が印象的でした。アルハラが減ったからこそ、お酒をたしなむ先輩の姿にあこがれることができたのではないでしょうか。
 若い日本酒ファンが広がる鍵は、これからの飲み会のあり方にあるのかもしれません。

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