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中日春秋

2021年3月28日 05時00分 (3月28日 05時00分更新)
 夕暮れどきに近所の野球少年が家の前でバットの素振りをしている。なかなか鋭い音を出している。こういう野球少年も最近ではなかなか見かけない。見ていて、なんだか、懐かしい気分になる
▼顔見知りの小学高学年である。夏場にスワローズの帽子をかぶっているのでツバメ党なのだろう。「今年のヤクルトはどうかな」と声を掛ける。イガグリ頭の少年は素振りをやめ、こちらを向く。「五位ですね」と言う
▼へえと思う。なかなか冷静なのだ。この年ごろのファンならひいき球団の予想順位を聞かれたら「絶対優勝」と言うものだろうと思っていた。自分がその年のころはそうだった。誰かがお気に入りのチームをくさせば、本気で腹を立てたものだ
▼「でも田口が入って、投手陣はそろってきたじゃないの」。こちらの世辞にも少年はなびかない。「まだまだです」「優勝はずっと先です」。五位だと譲らない
▼連れていた犬が先を急ぎたがったので詳しい分析を聞きそびれたが、夕闇の中の三分間の会話が楽しかった。野球に大人も子どももない。ペナントの行方について年齢も地位も関係なく、語り合える共通の「言語」。それがファンにとっての野球である
▼二〇二一年のプロ野球が開幕した。なお観客制限があり、延長戦もなしとは不自由だが、今年もプロ野球はある。スワローズは少年の見立て通りか、連敗した。

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