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<ユースク> 片目失明、米でグライダー免許取得 愛知・大府の吉田さん

2021年3月26日 16時00分 (3月26日 16時08分更新)
米国・ハワイでグライダー免許を取った吉田大作さん=本人提供

米国・ハワイでグライダー免許を取った吉田大作さん=本人提供

  • 米国・ハワイでグライダー免許を取った吉田大作さん=本人提供
  • 片目失明について取り上げたユースク紙面
 「私も右目失明者で、記事と同じ理不尽さを感じてきました。特に免許や就職の欠格条項が多い。グライダー免許(ライセンス)もその一つですが、空への思いを諦めきれず、米国でライセンスを取得しました」=愛知県大府市、大府特別支援学校教諭、吉田大作さん(46)
 ユースク取材班に寄せられた投稿に引き付けられた。1月25日付朝刊に掲載した特集「片目失明 障害じゃないの?」を読み、同じ境遇の人たちに「夢を諦めないで」と呼び掛ける吉田さんを訪ねた。 (石井宏樹)
 吉田さんは小児がんで一歳ごろに右目を失明し、以降は義眼。「疲れやすいが小さいころから特に問題はなかった」と振り返るが、成長とともに社会に「問題」とみなされていることを知った。
 両親と同じ警察官に憧れたが、目指した愛知県警は両目が見えないと受験資格がなく、教員の道を選んだ。就職後、新しい趣味として、エンジンのないグライダーを飛行機に引っ張ってもらって飛び始めた。
 飛行経験を重ね、やがて自ら操縦したい気持ちが強くなった。しかし、そこで問題となったのが、グライダーなどを自ら操縦する際に必要な「自家用操縦士」のライセンス。日本では、片目を失明していると身体検査に通らないからだ。
 吉田さんは「どうにかライセンスが取れないか」と模索。米国では自家用機の操縦に欠格条項がないことを知った。二〇〇八年から学校の長期休暇を利用してハワイの航空学校に通い、一年ほどでライセンスを取得した。
 「遠近感がつかみづらいため、着陸の実技試験が特に難しかった。シミュレーターで何度も練習してコツをつかんだ」と話す。
 ライセンス取得後、毎年ハワイに足を運んでグライダーの操縦を楽しんでいる。「街並みや海の夕暮れが美しく、エンジンがないため、風の音しか聞こえない。まるで鳥になったみたいに感じられる」
 日常生活に支障がない吉田さんは、障害者認定を求める考えはない。「片目失明だと一律に判断するのではなく、個人の能力を合理的に判断する社会になってほしい。片目を失明しても活躍できる場所があるはずだ」と話す。
 日本では取得できなかった自家用操縦士の免許を海外に渡って取得した経験を、特別支援学校の生徒たちにもこう教えている。「これから欠格条項の壁にぶつかるかもしれない。でも、世界は広い。簡単に夢を諦めないで」

「困難知って」当事者の反響、他にも

 片目失明者の問題をとりあげたユースク特集には他にも複数の当事者から反響が寄せられた。一部を紹介する。
 多重障害という言葉をご存じですか。交通事故で左目を失明し、突発性難聴で左耳が聞こえなくなりました。片目では遠近感がつかめず、片耳では音がどの方向から鳴っているのか分かりづらく、日常生活に支障が出ています。しかし、見える方の目と聞こえる方の耳が基準を超えていると、障害者認定はされません。誰しもがなり得る障害なのに見捨てられているように感じます=無職、63歳男性、岐阜県大垣市
 両目の角膜が変形する「円すい角膜」という病気です。ソフトコンタクトレンズにハードコンタクトレンズを重ねて矯正視力は0.7ですが、角膜が傷つきやすく、痛くて長時間着けられず、今は働くこともできていません。それでも矯正視力が出ているので、障害者認定はされない。世の中にはこのような困難を抱えている人がいることを知ってほしい=無職、小笠原康路さん(62)、愛知県碧南市

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