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数針縫うだけの『外傷』も…馬にとっては一大事 全身麻酔で縫合、形式上は「手術」となる

2021年3月26日 06時10分

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外傷で高松宮記念を回避したシヴァージ

外傷で高松宮記念を回避したシヴァージ

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 高松宮記念の前哨戦の1つであるシルクロードSを勝っていたシヴァージが、残念ながら本番への出走を回避した。1週前に馬房内で左前蹄冠部をぶつけ、軽い外傷を負ったため。1週前に時計を出さず、土日は坂路に入っていたが、予定していた25日の木曜追いでの状態を見極めずに陣営は回避を決断した。馬本位に考えられた英断だと思う。
 現役馬のけがで「外傷」に分類されるものは、駆動系の筋肉などに損傷がなければ、後に影響する心配は少ない。傷が治ってしまえば、退厩を経ずに乗り込みに復帰することも多い。1週前に予定していた時計を出せなかったようなケースでは、しばしば苦戦を強いられるが、レベルを上げていた有酸素運動能力が乗り込み開始前のレベルまでリセットされるからだ。一定期間乗り込んだ場合、通常の休み明けと、有酸素能力に関しては条件はほぼ同じに見なせる。
 日曜中京9Rの「大寒桜賞」に出走予定のマテンロウエールも中間に外傷を負った。年末の調教中にラチに衝突。胸前をパックリ開ける裂傷だった。人であれば外科医が患者に「はい、じっとしててね」などと言いながら数針縫うこともできる傷でも、馬はそうもいかない。全身麻酔であおむけの状態を固定して縫うから、形式上は「手術」を経たことになる。
 松永幹師は競走馬診療所で「復帰にどれだけかかるか分からない」と言われたそうだが、症例蓄積の少ない種類のけがでは、獣医師の予後見通しはどうしても弱気になる。弱気の見通しで復帰が早ければ「良かった、良かった」で済むが、強気に見通してあてが外れるとダメージが大きい。
 果たして同馬は1月半ばには乗り込みを再開した。「横山典も能力を高く買っていたし、青葉賞を経たリオンリオンのような経路で何とか日本ダービーに。今回は若干急仕上げ気味なので、能力に期待だが」と、トレーナーは説明した。この時季の1勝馬に寄せるコメントとしては最上級の賛辞だ。今走だけでなく、その先の青葉賞の◎もおそらく迷わない。

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