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しぼむ生物観測 気候変動 関心育む契機に チューリップなど廃止

2021年3月25日 05時00分 (3月25日 10時07分更新)
富山地方気象台の前に植えられている生物季節観測対象だった樹木など。まるで植物園だが、多くは今年から対象でなくなった=富山市石坂で

富山地方気象台の前に植えられている生物季節観測対象だった樹木など。まるで植物園だが、多くは今年から対象でなくなった=富山市石坂で

  • 富山地方気象台の前に植えられている生物季節観測対象だった樹木など。まるで植物園だが、多くは今年から対象でなくなった=富山市石坂で

「季節の動き 野山で自ら知って」

 富山県内でも24日、桜の開花宣言が出されたが、この桜のように花の開花や動物の初見、初鳴きを観測して発表する各地気象台の「生物季節観測」が今年から大幅縮小され、富山が全国唯一だったチューリップ開花観測も廃止された。寂しさを感じる気もするが、逆に自ら野山に出て季節の動きを観測するきっかけにしてもいいのでは。専門家は、気候変動への関心を深めてと呼び掛ける。(中島健二)
 訪れた人にはちょっとした植物園に見える。富山市石坂の富山地方気象台。正面玄関の前には、風格のあるソメイヨシノやリンゴ、梨、スイセンなどの樹木や草花が並ぶ。
 「年によって開花の早い遅いがあり、平年と比べた季節の進み具合を参考のために観測している」とは同気象台の大江幸治気象情報官。いずれも生物季節観測の対象で、開花なら開いた花の数を数える。鳥や昆虫、カエルなどは気象台周辺で職員が、通勤途上などに目を凝らしたり耳を澄ましたりしていたという。
 生物季節観測は一九五三年に始まり、昨年末段階では気象庁が植物なら三十四種目、四十一項目、動物なら二十三種目、二十四項目を対象とし、富山地方気象台では、このうち四十四種目、四十九項目を観測してきた。文字通り季節の便りとして親しまれてきたが気象庁は昨秋、縮小を発表。植物の六種目九項目のみに絞り、動物は全廃した。
 今月中旬、取材に訪れた日もソメイヨシノを観測していた大江さんは「自然環境の変化で動物の確認ができなくなり、観測できない年もでてきた」と説明。都市化も進み、標本木の確保すら困難な所もあるため縮小されたという。
 それでも観測者として、「季節の移り変わりを確認するには重要なもの」と言う大江さん。「これまでやってきたことができなくなるというのは残念」との思いも漏らした。
 日本鳥類保護連盟富山県支部事務局長でナチュラリストの長谷川覚(さとる)さん(74)も「地球温暖化は大変だと知ってはいても、直接的にはあまり感じられない。だから季節の観測は貴重な情報。なぜやめるのか」と疑問視するが、その一方で一つの機会としても縮小を捉える。「自分で季節の動きを知って、見ていけば、自分たちの身に温暖化が来るのかと感じられる。温暖化に対する認識が高まっていく気もする」と。
 長谷川さんは富山市婦中町の県自然博物園「ねいの里」で自然のガイドをしており「ここへ来て、自然の春を感じてもらえれば心も潤う」と呼び掛ける。既にウグイスなどが鳴き、オタマジャクシも見える「ねいの里」に、この春、訪れてみてはいかがだろう。
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 富山テレビ放送との連動企画で三年間、展開してきました「中島流!深掘りTOYAMA」は、二十四日夕の富山テレビの放送と、この記事で終了しました。

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