本文へ移動

<ユースク> 医療的ケア児者支援「むそう」戸枝理事長インタビュー詳報

2021年3月29日 05時00分 (3月29日 05時00分更新)
 ユースク特設ページの記事の中で話を聞いた社会福祉法人「むそう」(愛知県半田市)の戸枝陽基理事長(52)のインタビューの詳報を掲載します。
 むそうは名古屋市名東区の児童発達支援と放課後デイサービスの多機能型事業所「ほわわ名古屋星ヶ丘」を運営。全国医療的ケア児者支援協議会の代表として障害福祉サービスの報酬改定などでも現場の意見を伝えています。

戸枝陽基理事長

 -医療的ケア児の教育現場での受け入れ問題が注目されている理由は
 医療的ケア児は1970年代ごろから亡くなっていた子どもの命が助かるようになり、表れ始めました。医療機器が小型化し、入院し続けなくてもよくなる中で表れ始め、すでに40年ぐらいたっています。医療技術の進歩でその環境が進んでよりシビアに、よりたくさんの子どもが地域や家に戻れるようになり、この10年ぐらい課題になってきています。
 -ケア児は国の調査でも増加傾向にあります
 国の実態調査で19歳までの医療的ケア児が全国で2万人に迫り、さらに年間1000人を超えるペースで増えてきています。それだけ医療技術が進歩して救命されて家に帰る子どもの数が増えているということなんです。
 -助かる命が多くなるのは喜ばしいことですが、教育現場の受け入れの制度が追い付いていない。ケア児を支援する中での課題は?
 40年間、ケア児がいる歴史がありながら注目されたのはこの10年。医療的ケア児は今までの障害児のくくりの中にいない新しいタイプの障害児なんです。行政や福祉、医療の関係者がどのように解釈していいのかを迷い続けた10年だった。行政に言っても「対象とするサービス自体が用意されていないので紹介できない」と断られたり、学校に「入学したい」と言っても、「教育したことがない」と断られたりする。あらゆる場面で前例がないんです。前例主義の日本では扱えない人になってしまう。家族と本人だけが孤立してしまう状態が続くのが医療的ケア児の本質的な問題だと思います。
 -保育園入園が進まない実例として恵那市の家族を取材しました。一般の保育園や学校に通わせる上で受け入れ側の問題点はどこでしょうか
 医療的ケア児は旧来の障害児のカテゴリーとは異なった立ち位置にいるということを入り口で確認しないといけない。医療依存度、例えば呼吸器がついているとか、看護師さんが常時ついていないといけないといった医療的ケアが必要だが、一方で知的障害がまったくない子どもがいます。これは新しい障害のタイプと考えなければいけない。
 医療者を用意しなければいけないとなると、保育園に看護師を配備し、マンツーマンで付ける態勢にはありません。普通の学校にも医療者はいない。医療行為をする前提に学校はなっていないので断られてしまうわけです。しかし、知的障害がないならば、教育環境が整わないためにほかの子どもと言葉を交わすことがなくなり、結果的にコミュニケーションが遅れたり、後天的な知的障害になる危険性がある環境に居続けることになります。
 合理的配慮とは何かを考えた場合、知的障害がないことを重視するのか、医療的ケアが必要な点に重点を置くのか。友だちと触れ合うとか、正しい保育を受けることは、後天的な知的障害を引き起こさないために必須です。看護師を置くなどの医療的な配慮については、対応は可能だ。医療的ケアをしながら、正しい知的発達やコミュニケーションを学ぶ環境にいるべきだと考えるべき。それは私や家族の偏った考えではなくて、国際的な解釈で考えてもスタンダードな考え方です。保育園も学校も医療体制を早急に整備すべきだと考えます。
 -医療的ケア児が集団の中で過ごすことの利点は何ですか
 子どもに触れている人なら誰でもわかるが、子どもには子どもの中でしかないコミュニケーションがあります。例えば赤ちゃん同士が目が合うと、すごい笑顔で近寄っていく。同学年や同じ発達段階の友だちがお互いの成長には必須の環境刺激になるんです。
 家庭にケア児がいて保育士を派遣すれば正しく育つのであれば、新型コロナウイルスの感染リスクがある中で通園してもらう必要はない。友だちがいないと子どもが正しく育たないから、集団という環境を担保しないといけないんです。
前のページ

関連キーワード

PR情報

ユースクの新着

記事一覧