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コロナ渦中、広がるオンライン留学 各大学が臨場感模索

2021年3月24日 05時00分 (3月24日 05時00分更新)
オンラインで現地の日本人スタッフ(左)と住民の説明を聞く学生

オンラインで現地の日本人スタッフ(左)と住民の説明を聞く学生

 新型コロナウイルスの影響で海外渡航が難しい中、大学が学生向けに「オンライン留学」を企画する動きが広がっている。授業、現場体験、交流会…。留学をいかにオンラインで再現するか。各大学は旅行会社や提携先の大学を活用して模索する。コロナ収束後を視野に、学生に本物の留学への意欲を保ってもらうためだ。受験生にアピールする狙いもある。 (成田はな)
 通常なら留学先に着いて、まず味わうのは現地の空気。パソコンの画面からもニワトリの鳴き声が聞こえてきた。「フィリピンは闘鶏が有名で、一家に一羽ニワトリがいます」。フィリピン・セブ島の中心部から現地の日本人スタッフが話し始めた。
 名城大(名古屋市)が二月中旬、ビデオ会議システムで開いた「海外社会学習」。現地と映像でつないで社会問題を学ぶプログラムで、学生十五人が各自宅から参加した。今回はスラム街がテーマ。スタッフが歩いて川で洗濯する住民の姿や老朽化した家の様子を伝える。学生が「そこで子どもを育てるの?」と聞くと、現地の三十代女性は「そうなると思う」と答えた。
 役所から退去を迫られている問題を知った薬学部四年の佐分藍子(さぶりあいこ)さん(22)は、スラム街に住む人たちは「突然、家がなくなるリスク」と隣り合わせだと学び、「対面ではなくても現状を知ることはできる」と振り返った。
 名城大は例年、フィリピンの語学学校に学生十数人を派遣していたが、二〇二〇年度は中止に。代わりに旅行会社を使って無料の海外社会学習を始め、学生は孤児院や墓地に住む子どもなどの現状を学んだ。このほか、オンラインでフィリピン人講師から一対一で英語を学べる有料プログラムも用意した。

 留学中の授業を再現する動きも進む。皇学館大(三重県伊勢市)は、交流校のニュージーランドの大学が有料で配信する授業を活用。学生は二月中旬からリアルタイムで言語や文化を学ぶ。一定の英語力があれば助成金も受けられる。信州大(長野県松本市)はロシアの大学と連携し、日本文化をテーマとしたオンラインの共通講座を設けた。双方の学生が同時に受け、グループに分かれて議論し、発表する。
 愛知学院大(愛知県日進市)は、イギリスで英語教育を学ぶ現地学生による無料のオンライン授業も提供。国際交流センターの担当者は「無料のプログラムは学生に人気。参加人数も多い」と話す。
 異文化に触れるには現地の学生との交流も欠かせない。金城学院大(名古屋市)は提携先の韓国やイギリスなどの大学で日本語を学ぶ学生とのオンライン交流会を企画。互いの国のクイズがあり、学生生活の情報も交換できる。無料で四回開き、交流相手も含め延べ八十五人の学生が参加した。一月下旬、提携先のオーストラリアの大学とオンライン交流できる無料の場を設けたのは三重大(津市)。双方の学生が協力して会を進行。計二十八人が互いの文化について理解を深めた。

受験生にもアピール

 各大学がオンライン留学を強化するのは留学熱の高まりが背景にある。日本学生支援機構の調査によると、国内の大学に籍を残して海外に留学する日本人学生は2018年度には11万5000人を超え、09年度の3倍以上だ。
 受験生を意識する大学もある。基本的に学生全員が留学する学部もある愛知淑徳大(名古屋市)の担当者は「オンラインでも留学できると見せる姿勢が、受験生へのアピールにもなる」と話す。
 近年、文部科学省が大学側に世界で活躍する人材を育成するグローバル化を要請していることも影響している。ある私立大の担当者は「留学の経験は就職や将来に生きると思う」とした上で、コロナ収束後の留学再開を視野に「本当の留学をしたいと考える学生のモチベーションを維持しなければ」と明かした。

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