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袴田さん差し戻し審 3者協議始まる

2021年3月23日 05時00分 (3月23日 05時02分更新)
「とにかく勝つしかない」と話す袴田秀子さん(左)と小川秀世事務局長=22日、東京・霞が関で(高島碧撮影)

「とにかく勝つしかない」と話す袴田秀子さん(左)と小川秀世事務局長=22日、東京・霞が関で(高島碧撮影)

  • 「とにかく勝つしかない」と話す袴田秀子さん(左)と小川秀世事務局長=22日、東京・霞が関で(高島碧撮影)
  • DNA型鑑定された衣類の写真=2011年8月26日(弁護団提供)
 旧清水市(静岡市)の一家四人強盗殺人事件で死刑が確定し、その後、静岡地裁が再審開始を決定し釈放された袴田巌さん(85)の差し戻し審の三者協議が二十二日、東京高裁で始まった。事件から一年二カ月後、みそタンク内で見つかった衣類の血痕の変色状況が争点。弁護団は「検察は血痕の赤みが消えないことがありうるのか、立証すべきだ」との意見書を提出した。
 昨年十二月、犯行当時に袴田さんが着ていたとされる衣類五点に付いた血痕の変色について、最高裁は「審理が尽くされていない」と判断し、東京高裁に審理を差し戻した。
 当時の捜査資料は、血痕に赤みが残っているとしている。この日の協議で、弁護団は条件を変えて複数回にわたり血痕を付けた衣類をみそに漬ける実験をし「どのような場合でも二週間以内に血痕の赤みは消える」と主張。検察側は、反論する専門家の意見書を七月に提出する考えを示した。
 次回の三者協議は六月二十一日で、弁護団はみそ漬け実験の資料を提出する。終了後、小川秀世事務局長は「検察の意見書の提出が七月までかかるのはひどい。血痕の赤みが残る条件も出してほしい」と語った。袴田さんの姉、秀子さん(88)=浜松市中区=は、「もう五十年。長いと言ってもしょうがない。とにかく勝つしかない」と力を込めた。
 事件は一九六六年に発生。みそ製造会社の専務宅が全焼し、一家四人の他殺体が見つかった。八〇年、袴田さんの死刑が確定。二〇〇八年から第二次再審請求が始まった。一四年に静岡地裁が再審開始を決定し、袴田さんを釈放したが、一八年に東京高裁が地裁決定を取り消した。 (高島碧)

◆着衣の血痕 色み焦点

 袴田さんの差し戻し審の焦点は、犯行時の着衣とされた衣類の血痕の色みが不自然かどうかだ。 (山田雄之)
 最高裁は昨年十二月、逮捕から一年以上たって、袴田さんの勤務先のみそタンクから発見された「犯行時の五点の衣類」に、赤みを帯びた血痕が残っていたことを疑問視。血液のタンパク質がみその糖分に五〜六カ月触れると「メイラード反応」で褐色化するという可能性について、専門的知見に基づき十分に審理されていないなどとして、高裁に審理を差し戻した。みそに漬かった血液が褐色化し、赤みが消えることが証明されれば、第三者がタンクに隠した疑いが濃くなる。
 弁護団は最高裁の決定を受け、複数の専門家に相談したものの、血とみその化学反応を調べた研究結果は見当たらず、研究に取り組んでいる専門家がいる形跡も確認できなかった。
 そこで弁護団は自ら、血液を付着させた布をみそに漬ける実験を百以上のパターンで実施。どのように条件を変えても、すべて二週間以内に血液の赤みは消え、黒や黒褐色になった。
 あるベテラン裁判官は「裁判所の指揮次第では検証実験をする可能性もある」と指摘。そうなればさらなる長期化は必至だ。最高裁決定では、二人の裁判官が「時間をかけることには反対」などとして再審を直ちに開始すべきだとの反対意見を述べている。
 白鷗大の村岡啓一教授(刑事訴訟法)は「科学論争になれば審理は長引く。いたずらに踏み込みすぎるべきではない。常識的な範囲で『赤みは残らない』と証明できれば、裁判所は再審開始を認めてもいいのではないか」と話した。

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