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高等教育、協調が必要 今月で退任の県立大・鬼頭学長に聞く

2021年3月22日 05時00分 (3月22日 05時02分更新)
退任を前に思いを語る県立大の鬼頭宏学長=静岡市駿河区で

退任を前に思いを語る県立大の鬼頭宏学長=静岡市駿河区で

 県立大(静岡市駿河区)の鬼頭宏学長(74)が三月末で六年の任期を終える。長泉町生まれで、歴史人口学の専門家から見た故郷に求められるものは、多様性と協調だという。十九日に県内の人口史をまとめた県史別冊を発行。二十三日には同大で最終講義を控える鬼頭学長に、県内の大学教育の将来像について聞いた。 (聞き手・谷口武)
 −県史別冊や最終講義への思いは。
 約束を果たせてほっとしている。二〇一五年度に県の人口減少問題に関する有識者会議で座長を務め、人口ビジョンと総合戦略を出した。川勝平太知事から人口史をまとめるよう言われていた。
 最終講義では、人口史を編さんして分かったことを伝えようと思っている。今は人口減少の時代。グローバル化や都市集中といった人口を伸ばしてきた要因が限界に達した。二十一世紀は、次に人口が安定するまでの過渡期。これから社会をどう進めていけばいいかの提案ができれば。
 −コロナ禍で学生にとっては先の見えない一年だった。
 困難な状況で県立大の学生は、どうしたら自分のやりたいことを実現できるか積極的に考えている。学生と教員をつなぐポータルサイト「K−Commu(けい・こみゅ)」の立ち上げや、食料を無償で配布して学生同士が交流する「たべものカフェ」を開くなど、アイデアが出てきた。大学も支援していく。
 −少子化の中、大学に求められるものは。
 多様性と協調が必要だ。文部科学省は大学の質を高めようといろいろ求めてくるが、組織が画一化していく。一つだめなことがあれば、共倒れになる。生物の世界と同じ。互いに補って協調し、地域が良くなる。
 一九年秋には「静岡県立大学SDGsイニシアティブ」を立ち上げ、誰ひとり取り残さないと誓った。それを売りに学生が来てくれるかは別の話だが、意識付けは大事だ。
 −統合・再編など県内の大学でも協調(連携)する動きがある。
 これまでは協調が欠けていた。県内で自分たちが果たすべき役割を議論する場がなかった。地域のために大学が何をしなければならないか、どういう協力ができるのか。議論なしに、再編はできないだろう。
 −静岡県のために県立大ができることは。
 若い人を育てること。江戸時代でも十八世紀後半、藩校が各地にできた。飢饉(ききん)があり、財政的に一番厳しかったころ。そんな時期に人材を育てようとしたのは大事で、育った人たちが幕末につながっていった。今も同じ。困難があって、社会をつくり替えていかないと。江戸時代より現代は、先が見通せている。どういう能力と人材が必要か分かっている。教育の効果は得られるのではないか。
 −学長退任を前に。
 高等教育政策を地域で考えましょうよ、と言いたい。県内では昨年四月に農林環境専門職大、今年四月には工科短期大学校、静岡社会健康医学大学院大と県立の高等教育機関の開学が続く。県の管轄は専門職大と短期大学校が経済産業部、大学院大は健康福祉部。それぞれが、それぞれの目的でつくっても、横のつながりがない。俯瞰(ふかん)してその必要性を考えようということだ。

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